デジタル化とグローバル化が進む現代において、企業が保有するコンテンツ(ソフトウェア、音楽、映像、出版物、キャラクター、デザインなど)の価値はますます高まっています。これらのコンテンツを海外で活用したり、逆に海外のコンテンツを日本で利用したりする際には、著作権ライセンス契約が不可欠です。著作権ライセンス契約書(Copyright License Agreement)は、著作権者(Licensor)がその著作物を利用する権利を、特定の条件のもとで第三者(Licensee)に許諾する際に締結される法的文書です。
この契約書は、ライセンスの対象となる著作物の範囲、許諾される利用方法(複製、改変、配布、公衆送信など)、利用地域、期間、ライセンス料、著作権表示、保証と免責、準拠法、紛争解決など、極めて詳細な条件を定めます。その正確な翻訳は、著作権の適正な利用と保護、収益の確保、法的リスクの回避、そして将来的な紛争の防止のために不可欠です。翻訳のミスや内容の理解不足は、著作権侵害、無許諾利用、期待収益の喪失、追加費用の発生、国際的な信用失墜、さらには高額な法的紛争へと発展するリスクをはらんでいます。
特に、国ごとに著作権法、デジタルコンテンツに関する法規、競争法、税法、そして国際的な商慣習が大きく異なるため、単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度やコンテンツの特性に応じた法的・商業的・文化的なニュアンスを踏まえた上で契約内容を理解し、翻訳することが不可欠です。
本記事では、これまでの経験に基づき、著作権ライセンス契約書の翻訳における重要なポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳された契約書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。
貴社の海外ビジネスにおいて、著作権ライセンス契約の適切な理解と運用を通じて、グローバルなコンテンツ活用を成功に導き、知的財産権を確実に保護するために、ぜひ本記事をお役立てください。
著作権ライセンス契約書とは何か?その目的と国際ビジネスにおける重要性
著作権ライセンス契約書(Copyright License Agreement)とは、著作権者(Licensor)が、自身の著作物に対する独占的な権利の一部または全部を保持したまま、特定の条件の下で第三者(Licensee)にその著作物を利用する権利を許諾する契約です。著作権そのものを譲渡する著作権譲渡契約(Copyright Assignment Agreement)とは異なり、ライセンス契約では著作権の所有権は著作権者に留まります。
国際ビジネスにおいて、著作権ライセンス契約の対象となる著作物は多岐にわたります。
-
ソフトウェア: アプリケーション、OS、ゲーム、システム
-
音楽: 楽曲、BGM、効果音
-
映像: 映画、テレビ番組、アニメ、ドキュメンタリー、CM
-
出版物: 書籍、雑誌、漫画、電子書籍
-
キャラクター: アニメキャラクター、マスコット、ゲームキャラクター
-
デザイン: ロゴ、グラフィックデザイン、ウェブサイトデザイン、プロダクトデザイン
-
写真・イラスト: プロ用写真、ストックフォト、イラストレーション
-
データベース: 独自のデータコレクション
この契約書は、以下の非常に多岐にわたる詳細な条項を含みます。
-
ライセンス対象著作物(Licensed Works):ライセンスされる著作物の具体的な特定(タイトル、バージョン、形式など)。
-
許諾される利用方法(Scope of License / Permitted Uses):複製、改変、配布、公衆送信、展示、上演など、どのような方法で利用が許されるか。目的、期間、地域、媒体の限定。独占的か非独占的か。サブライセンスの可否。
-
ライセンス料(License Fees / Royalties):ライセンス料の計算方法(固定料金、ロイヤリティ率、最低保証金など)、支払いスケジュール、支払い方法、支払い通貨、源泉徴収税の取り扱い、報告義務。
-
著作権表示(Copyright Notice):ライセンシーが著作物を利用する際に、適切な著作権表示(例: © [年] [著作権者名])を行う義務。
-
品質管理と承認(Quality Control and Approval):ライセンシーが著作物を改変する場合や、商品化する際の著作権者による承認プロセス、品質基準。
-
保証と免責(Warranties and Disclaimers):著作権者が著作物の正当な権利を有していることの保証、第三者の権利を侵害しないことの保証、利用に関する免責事項。
-
侵害への対応(Enforcement of Rights):第三者による著作権侵害が発生した場合の対応責任、訴訟費用負担。
-
秘密保持義務(Confidentiality):契約内容や開示された機密情報の保護義務。
-
責任の制限と補償(Limitation of Liability and Indemnification):契約違反や著作物利用によって生じた損害に対する責任範囲、責任上限額、相手方への補償義務。
-
契約期間と終了(Term and Termination):契約期間、自動更新の有無、更新条件、契約解除条件(違反、破産など)、解除後の著作物利用に関する義務。
-
準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution):契約に適用される法律、紛争が発生した場合の解決方法(裁判、国際仲裁、調停など)。
国際ビジネスにおいて著作権ライセンス契約書が特に重要なのは、以下の理由からです。
-
著作権法の属地主義: 著作権は国ごとに独立して発生・保護される属地主義が原則です。国際条約(ベルヌ条約、WIPO著作権条約など)によって保護は相互に認められるものの、具体的な権利内容や侵害判断、保護期間などは各国の法律に依存するため、契約書でどの国の法律を準拠法とするか、利用地域をどう定めるかが極めて重要です。
-
利用形態の多様化と複雑化: デジタルコンテンツの普及により、複製、公衆送信、改変などの利用形態が複雑化しており、契約書でこれらの利用方法を明確に定義しないと、無許諾利用や権利侵害のリスクが高まります。
-
税務処理の複雑さ: 国境を越えたライセンス料の支払いには、源泉徴収税やVAT/GST(付加価値税/サービス税)などの税務処理が伴うため、契約書でその責任を明確にする必要があります。
-
知的財産権の保護と監視: ライセンス許諾後も、著作権者は自身の権利が適切に利用されているか監視し、侵害があれば適切に対処する必要があります。契約書で侵害発生時の対応義務や費用負担を明確にすることが重要です。
-
ブランドイメージと品質管理: 特にキャラクターやブランドのデザインなど、ライセンスを通じて企業のブランドイメージが形成される場合、利用されるコンテンツの品質管理や承認プロセスを契約書で明確に定めることが不可欠です。
-
紛争解決: 国際的な契約では、紛争が発生した場合の解決方法(準拠法、仲裁など)を事前に明確にしておくことが、リスク管理上非常に重要です。
英文著作権ライセンス契約書の特徴と和文契約書との違い
国際的な著作物利用取引では、多くの場合、英文で契約書が作成されます。その特徴は、日本の和文契約書とは異なる点がいくつかあります。
-
Detailed Scope of License / Permitted Uses(許諾される利用方法の詳細化):
-
単に「利用を許諾する」とせず、著作物の複製(Reproduction)、頒布(Distribution)、公衆送信(Public Performance / Communication to the Public)、改変(Adaptation / Derivative Works)、翻訳(Translation)など、著作権者が保有する個々の支分権について、独占的(Exclusive)か非独占的(Non-Exclusive)か、サブライセンス(Sublicense)の可否、利用の目的、特定の媒体(Medium)、特定の地域(Territory)、特定の期間(Term)を極めて詳細に規定します。
-
和文契約でも利用範囲は定めますが、英文契約では、特に将来発生しうる新たな利用方法(例:メタバース内での利用、AI学習への利用など)についても言及したり、許諾の範囲を明確にするために非常に詳細な定義を置く傾向が強いです。
-
-
Grant of Rights(権利許諾)の明確な文言:
-
"Licensor hereby grants to Licensee, and Licensee hereby accepts from Licensor, a [exclusive/non-exclusive], [transferable/non-transferable], [sublicensable/non-sublicensable] license to [specific uses]..." のように、許諾する権利の種類と性質が厳密に記述されます。
-
-
License Fees / Royalties and Reporting(ライセンス料と報告)の厳格な規定:
-
ロイヤリティの計算方法(売上高、粗利益、数量などに基づく割合)、最低保証金(Minimum Guarantee)、支払いスケジュール、監査権(Audit Rights)、源泉徴収税の取り扱いが詳細に定められます。ライセンシーには、ロイヤリティ計算に必要な販売データや利用実績の定期的な報告義務が課せられます。
-
-
Representations and Warranties(表明と保証)の詳細な記述:
-
著作権者がライセンス対象著作物の正当な著作権者であること、第三者の権利を侵害しないこと、著作物に既知の欠陥がないことなどを表明し保証する条項が含まれます。ライセンシー側も、契約遵守能力や法令遵守を表明保証することがあります。
-
-
Indemnification(補償)とLimitation of Liability(責任の制限)の適用:
-
著作権侵害や契約違反などによって生じた損害に対する補償義務や、損害賠償責任の上限額が明確に規定されます。特に知的財産権の侵害リスクが高いコンテンツ取引では、補償条項が重要視されます。
-
-
Infringement and Enforcement(侵害と権利行使)に関する条項:
-
ライセンス対象著作物が第三者によって侵害された場合に、どちらの当事者がその侵害に対処する責任を負うのか、訴訟費用をどのように分担するのか、得られた賠償金をどう分配するのかが規定されます。
-
-
Termination and Post-Termination Obligations(契約期間と終了後の義務):
-
契約期間の他に、契約解除条件(重大な契約違反、破産、支払い不履行など)、通知期間、解除後の著作物の利用中止義務、既存の在庫の処理、秘密保持義務の継続などが詳細に規定されます。
-
-
Governing Law and Dispute Resolution(準拠法と紛争解決)の指定:
-
国際的な著作権ライセンス契約では、国際仲裁を紛争解決手段として指定することが一般的であり、仲裁地、仲裁機関、仲裁規則を明確に定めます。著作権法の属地主義を考慮し、どの国の著作権法を適用するかが重要です。
-
日本の和文著作権ライセンス契約書に比べ、英文著作権ライセンス契約書は、許諾される権利の範囲の細分化と明確化、ライセンス料の計算と報告義務、保証と補償、権利侵害への対応、そして国際的な準拠法・紛争解決メカニズムに関して、より詳細かつ厳密な記述が求められる傾向が強いです。翻訳においては、これらの法的・商業的ニュアンスを正確に反映した表現を用いることが不可欠です。
著作権ライセンス契約書翻訳における重要ポイント
著作権ライセンス契約書の翻訳は、貴社のグローバルなコンテンツ活用戦略、知的財産権保護、収益確保、そして法的リスクに直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務・事業開発・経理・マーケティング部門など多岐にわたる視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。
-
ライセンス対象著作物(Licensed Works)と許諾される利用方法(Scope of License)の厳密な翻訳
-
ライセンスされる著作物の具体的な特定(タイトル、バージョン、形式など)、そして許諾される利用方法(複製、改変、配布、公衆送信、展示、上演など)の範囲、目的、期間、地域、媒体を、曖昧さなく厳密に翻訳することが不可欠です。独占的か非独占的か、サブライセンスの可否など、権利の性質を正確に表現しないと、無許諾利用や著作権侵害のリスクが生じます。
-
-
ライセンス料(License Fees / Royalties)と支払い条件、報告義務の明確化
-
ライセンス料の計算方法(固定料金、ロイヤリティ率、最低保証金など)、支払いスケジュール、支払い方法、支払い通貨、為替リスクの負担者、そして海外からの支払いにおける源泉徴収税の有無や税率、VAT/GST(付加価値税/サービス税)などの税務上の取り扱いを正確に翻訳することが不可欠です。また、ライセンシーに課される販売実績や利用状況の報告義務についても詳細かつ正確に翻訳し、監査権の有無も確認すべきです。
-
-
著作権表示(Copyright Notice)と品質管理(Quality Control)に関する条項の徹底的な翻訳
-
ライセンシーが著作物を利用する際に、適切な著作権表示(例: © [年] [著作権者名])を行う義務が明確に翻訳されているか確認することが重要です。また、著作物を改変する場合や、商品化する際の著作権者による承認プロセス、品質基準を正確に翻訳し、ブランドイメージと著作物の整合性を保つための規定が適切に盛り込まれているか確認すべきです。
-
-
保証と免責(Warranties and Disclaimers)、責任制限(Limitation of Liability)と補償(Indemnification)に関する条項の確認
-
著作権者が著作物の正当な権利を有していること、第三者の権利を侵害しないことの保証内容、そして契約違反や著作物利用によって生じた損害に対する責任の制限と上限額を厳密に翻訳することが不可欠です。また、特定の状況下で当事者が相手方を補償する義務の範囲も明確に翻訳されているか確認すべきです。この条項は、将来的な訴訟リスクと費用負担に直接影響するため、細心の注意を払う必要があります。
-
-
侵害への対応(Enforcement of Rights)と訴訟費用に関する明確な翻訳
-
第三者による著作権侵害が発生した場合に、どちらの当事者がその侵害に対処する責任を負うのか、訴訟費用をどのように分担するのか、得られた賠償金をどう分配するのかを正確に翻訳することが不可欠です。権利侵害は収益機会の損失に直結するため、対応体制を明確にする必要があります。
-
-
契約期間と終了(Term and Termination)、終了後の義務の正確な翻訳
-
契約期間、自動更新の有無、更新条件、契約解除条件(違反、破産など)、通知期間を正確に翻訳します。特に重要なのは、契約終了後の著作物利用に関する義務(利用中止、既存在庫の処理、データ返還など)を明確に翻訳することです。これにより、終了後の無許諾利用や情報漏洩のリスクを防ぎます。
-
-
準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution)
-
契約に適用される法律(著作権法の属地主義を考慮し、どの国の著作権法が適用されるか)、そして紛争が発生した場合の解決方法(国際仲裁、調停、裁判など)、仲裁地の選定、仲裁機関、仲裁規則、仲裁人の数、仲裁判断の拘束力などを正確に翻訳することが不可欠です。国際取引では、自社にとって有利な準拠法や紛争解決地を指定することが戦略上重要であり、その内容を正確に把握すべきです。
-
-
AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認
AI翻訳技術は、初稿の作成や用語の統一に役立ちますが、著作権ライセンス契約書のような法的・商業的に極めて複雑な文書、特にライセンスの範囲、ロイヤリティ計算、保証と免責、知的財産権の侵害対応といった条項においては、法的ニュアンス、各国の著作権法、税法に関する知見を完全に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、法務知識、知的財産権に関する専門知識、および国際商取引の実務経験を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、安全な国際取引の基盤となります。
強固な情報セキュリティ体制
-
著作権ライセンス契約書には、貴社の知的財産、事業戦略、財務情報など、企業の競争力や事業の成否に直結する極めて機密性の高い情報が含まれることが一般的です。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の競争力低下、信用失墜、法的な責任問題など、甚大な損害を被る可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきですし、当社はこれを徹底しています。
-
現地の弁護士・知的財産専門家との連携
翻訳された契約書をベースに、必ず現地の契約法、著作権法、競争法、税法に詳しい弁護士や、知的財産権の専門家と連携し、契約内容の法的妥当性、リスク、コンプライアンス状況を最終確認することが不可欠です。翻訳は「理解の橋渡し」であり、最終的な法的判断は現地の専門家が行うべきです。
著作権ライセンス契約書の翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割
著作権ライセンス契約書は、グローバルなコンテンツ活用と知的財産権保護を左右するため、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。
ケーススタディ1:自社開発ソフトウェアの海外販売(日本のソフトウェア企業)
状況: 日本のソフトウェア開発企業が、自社開発の基幹業務ソフトウェアを欧米市場で展開するため、現地の販売代理店(ライセンシー)と英文の著作権ライセンス契約を締結するケース。
-
事業開発部/海外事業部:
-
必要性: ソフトウェアのライセンス許諾範囲(利用ユーザー数、利用地域、利用期間など)、ライセンス料の計算方法(シート数、サブスクリプションモデルなど)、最低保証金、販売代理店の販売義務などを詳細に確認します。収益性と市場戦略に直結する内容です。
-
ケース: 契約書に記載された「欧米市場での独占的販売権の範囲」、「ライセンス料のロイヤリティ率と計算基準」、「年間の最低保証販売額」を和訳で確認し、事業計画と収益予測を評価します。過去には、ライセンスの利用地域に関する翻訳が曖昧だったため、想定外の地域での販売が行われ、トラブルに発展した事例がありました。当社は、このようなライセンス範囲に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。
-
-
法務部/知的財産部:
-
必要性: 契約全体の法的妥当性、リスク管理、特に許諾される権利の範囲(複製、頒布、改変の可否)、著作権表示義務、保証と免責、知的財産権侵害への対応、責任制限、契約解除条件、準拠法(日本法またはライセンシー国法)、紛争解決条項の適切性を確認します。
-
ケース: 契約書に記載された「ソフトウェアのソースコードの開示の有無と範囲」、「ライセンシーによるソフトウェアの改変の可否」、「第三者による著作権侵害が発生した場合の対応義務と費用分担」を和訳で確認し、法的リスクと知的財産保護戦略を評価します。
-
-
経理部/財務部:
-
必要性: ライセンス料の支払いスケジュール、支払い通貨、海外からの支払いにおける源泉徴収税の取り扱い、ロイヤリティ報告義務などを確認し、適切な会計処理と資金計画を行います。
-
ケース: 契約書に記載された「四半期ごとのロイヤリティ報告と支払い期限」、「米国における源泉徴収税の有無と軽減税率の適用」を和訳で確認し、キャッシュフローと税務リスクを管理します。
-
ケーススタディ2:海外の有名キャラクターの日本での商品化許諾(日本の小売業)
状況: 日本の小売企業が、米国のエンターテイメント企業が保有する有名キャラクターを、日本国内で商品化・販売するため、英文の著作権ライセンス契約を締結するケース。
-
マーチャンダイジング部/商品企画部:
-
必要性: ライセンスされるキャラクターの範囲、商品化できるアイテムの種類(衣料品、文具、玩具など)、利用期間、利用地域、著作権表示義務、品質管理と承認プロセスなどを詳細に確認します。商品の魅力と販売戦略に直結する内容です。
-
ケース: 契約書に記載された「商品化可能なアイテムリストの限定」、「キャラクターデザインの改変に関する承認プロセス」、「商品パッケージへの著作権表示義務」を和訳で確認し、商品企画と生産計画を評価します。
-
-
法務部/知的財産部:
-
必要性: 契約全体の法的妥当性、リスク管理、特に許諾される利用範囲の限定、ロイヤリティの計算と監査権、品質管理と承認、保証と免責、知的財産権侵害への対応、責任制限、契約解除条件、準拠法(米国法)、紛争解決条項の適切性を確認します。
-
ケース: 契約書に記載された「ロイヤリティ監査権の頻度と範囲」、「ライセンシーによる著作権侵害があった場合の責任分担」、「米国の裁判所の専属管轄」を和訳で確認し、法的リスクと知的財産保護戦略を評価します。
-
-
経理部/財務部:
-
必要性: ロイヤリティの計算方法、最低保証金、支払いスケジュール、支払い通貨、海外への支払いにおける源泉徴収税の取り扱い、報告義務などを確認し、適切な会計処理と資金計画を行います。
-
ケース: 契約書に記載された「年間売上高に応じたロイヤリティ率の適用段階」、「最低保証金の支払い時期」、「米国のエンターテイメント企業へのロイヤリティ支払いにおける税務処理」を和訳で確認し、キャッシュフローと税務リスクを管理します。
-
よくある質問(FAQ)
著作権ライセンス契約書の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。
Q1: 著作権ライセンス契約書における「許諾される利用方法(Scope of License / Permitted Uses)」の条項は、翻訳でどのように注意すべきですか?
A1: この条項は、著作権ライセンス契約の核となる部分であり、極めて厳密な翻訳が求められます。翻訳においては、著作物の複製(Reproduction)、頒布(Distribution)、公衆送信(Public Performance / Communication to the Public)、改変(Adaptation / Derivative Works)、翻訳(Translation)など、個々の利用方法について、独占的(Exclusive)か非独占的(Non-Exclusive)か、サブライセンス(Sublicense)の可否、利用の目的、特定の媒体(Medium)、特定の地域(Territory)、特定の期間(Term)を、曖昧さなく正確に表現することが不可欠です。この部分の誤訳や不明確な表現は、著作権侵害、無許諾利用、期待収益の喪失といった重大なリスクに直結するため、細心の注意が必要です。
Q2: 「ライセンス料(License Fees / Royalties)」と支払い条件、報告義務に関する条項の翻訳で、特に注意すべき点は何ですか?
A2: ライセンス料は、著作権者にとっての収益源であり、ライセンシーにとってはコストであるため、非常に重要な条項です。翻訳においては、ライセンス料の計算方法(固定料金、ロイヤリティ率、最低保証金など)、支払いスケジュール、支払い方法、支払い通貨、為替リスクの負担者、そして海外からの支払いにおける源泉徴収税の有無や税率、VAT/GST(付加価値税/サービス税)などの税務上の取り扱いを正確に表現することが不可欠です。また、ロイヤリティ計算に必要な販売データや利用実績の定期的な報告義務、監査権(Audit Rights)についても詳細かつ正確に翻訳し、透明性を確保する必要があります。不正確な翻訳は、予期せぬ費用発生や税務上のトラブルの原因となります。
Q3: 国際的な著作権ライセンス契約で、「保証と免責(Warranties and Disclaimers)」と「責任制限(Limitation of Liability)」「補償(Indemnification)」の条項はなぜ重要視されますか?
A3: これらの条項は、将来的な法的紛争発生時の当事者の責任範囲とリスクを定めるものです。翻訳においては、著作権者が著作物の正当な権利を有していること、第三者の権利を侵害しないことなどの保証内容、そして契約違反や著作物利用によって生じた損害に対する責任の制限と上限額を厳密に翻訳することが不可欠です。また、特定の状況下で当事者が相手方を防御・補償する義務の範囲も明確に翻訳されているか確認すべきです。特に、第三者からの著作権侵害訴訟リスクを考慮し、これらの条項を慎重に検討・翻訳することが極めて重要です。
Q4: 著作権ライセンス契約における「侵害への対応(Enforcement of Rights)」の取り扱いは、どのように注意して翻訳すべきですか?
A4: ライセンス対象著作物が第三者によって侵害された場合、誰が、どのように対処するのかを明確に定めておく必要があります。翻訳においては、著作権侵害が発生した場合に、どちらの当事者(著作権者かライセンシーか)がその侵害に対処する責任を負うのか、訴訟費用をどのように分担するのか、得られた損害賠償金をどう分配するのかを正確に翻訳することが不可欠です。権利侵害は収益機会の損失に直結し、対応が遅れるとさらに被害が拡大する可能性があるため、この点は非常に重要です。
Q5: 著作権ライセンス契約書で「準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution)」の条項が非常に重要と言われるのはなぜですか?
A5: 準拠法(Governing Law)は、契約の解釈・有効性・履行に適用される法律であり、紛争解決は問題発生時の解決プロセスを定めます。著作権は国ごとに保護される属地主義が原則であるため、どの国の法律が契約に適用されるのか、特に著作権法のどの国の規定が適用されるのかを明確に合意しておくことが不可めて重要です。また、紛争が生じた場合にどの国で、どのような方法(国際仲裁、調停、裁判など)で解決するのかを明確に合意しておくことが、予測可能性を高め、紛争解決のコストと時間を削減するために極めて重要ですし、自社にとって有利な条件を確保すべきです。翻訳においては、これらの条項を正確に理解し、現地の弁護士や知的財産専門家と連携して最終確認を行うことが不可欠です。
まとめ
著作権ライセンス契約書の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業が保有する貴重な知的財産をグローバル市場で戦略的に活用し、同時に確実に保護するための極めて重要なプロセスです。英文と和文の契約書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、事業開発、法務、知的財産、経理、マーケティングといった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から当社はこれを強く認識しています。
特に、許諾される利用方法、ライセンス料と報告義務、保証と免責、責任制限と補償、侵害への対応、そして準拠法と紛争解決といった条項は、潜在的な法的・経済的リスクを最小限に抑え、グローバルなコンテンツ活用を成功させ、知的財産権を保護するための鍵となります。
当社は、このような複雑な著作権ライセンス契約書の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおける著作権ライセンス契約に関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
ご相談は無料です。いつでもお気軽にご連絡ください。
【無料】PDFダウンロード
一言に契約書といっても、業務委託契約書(Services Agreement)、独立請負人契約書(Independent Contractor Agreement)、秘密保持契約書(Non-Disclosure Agreement)、業務提携契約書(Business Partnership Agreement)など、様々なものがあり、契約の種類も多様化しています。
契約内容を正しく理解し、法的リスクを回避するには、適切な英訳が不可欠です。本記事では、契約書における基本用語の英訳50選をご紹介します。 >>PDFダウンロード(無料)
翻訳の発注に失敗しないためには、どうすればいいのか。
翻訳外注コストを抑えるには、どうすればいいのか。
これらの課題の解決策をお教えします。
翻訳発注に失敗しないためには、知らないではすまされない重要なポイント!
優れた翻訳会社ほど多忙で引く手あまたです。価格が相場に比べて格段に低い翻訳会社は、良心的なのか、それとも単に制作プロセスを簡単に済ませているだけなのかをよく見極めましょう。また、同じ翻訳会社でも、制作プロセス次第で翻訳料金は大きく上下します。希望するレベルを詳細に伝えることで、翻訳会社は最適なプロセスをデザインすることができます。 >>PDFダウンロード(無料)
契約書翻訳に役立つリンク集
・法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
・日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
・Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
・日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
・weblio 英和辞典・和英辞典
・英辞郎 on the web
契約書翻訳に関連する記事
・【2024年版】ビジネスで欠かせない「契約書翻訳」におすすめの8つのポイント
・契約書翻訳を依頼する際に知っておいていただきたいこと
・契約書の翻訳を外注するとき、特に注意すべき3点
・翻訳会社のプロの法律系翻訳者が選ぶ!契約書の英訳におすすめの書籍12選
・法律文書:AI翻訳時代における人力翻訳の価値とは?