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建築設計契約書 翻訳:海外設計プロジェクトを成功に導く要点と関係部門の役割|翻訳会社WIPジャパン

作成者: WIP japan|Jul. 08, 2025

 

グローバルな建設プロジェクトにおいて、設計図書通りに工事が進められているか、品質や安全が確保されているかを確認する工事監理(Construction Supervision / Construction Administration)は極めて重要な役割を担います。この工事監理業務を委託する際に締結するのが、工事監理契約書(Construction Supervision Agreement / Construction Administration Agreement)です。

この契約書は、監理業務の範囲、監理報酬、監理者の権限、報告義務、責任範囲、保険、紛争解決などを詳細に定める法的文書であり、その正確な翻訳は、プロジェクトの品質確保、安全管理、スケジュール遵守、そして潜在的なリスクの回避のために不可欠です。翻訳のミスや内容の理解不足は、品質問題の見落とし、安全管理の不徹底、工期遅延、追加費用、責任の曖昧化、さらには高額な法的紛争へと発展するリスクをはらんでいます。

特に、国ごとに建設関連法規(建築基準法、労働安全衛生法など)、契約法、工事監理者のライセンス制度、専門家賠償責任、そして国際的に標準化された契約モデル(FIDICなど)の解釈が大きく異なるため、単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度や商慣習を踏まえた上で契約内容を理解し、翻訳することが不可欠です。

本記事では、私どもが数多くの工事監理契約書の翻訳を支援してきた経験に基づき、翻訳における重要ポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳された契約書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。

貴社の海外建設プロジェクトにおいて、工事監理契約の適切な理解と運用を通じて、品質と安全を確保し、リスクを最小限に抑えるために、ぜひ本記事をお役立てください。

工事監理契約書とは何か?その目的と国際プロジェクトにおける重要性

工事監理契約書(Construction Supervision Agreement / Construction Administration Agreement)とは、工事の発注者(Owner / Client)が、請負業者によって行われる建設工事が、設計図書や契約条件に従って適切に実施されているかを監理する業務を、設計者または独立した専門家(Supervisor / Administrator / Engineer)に委託する際に締結する、極めて重要な法的文書です。

この契約書は、以下の非常に多岐にわたる詳細な条項を含みます。

  • 工事監理業務の範囲(Scope of Supervision Services):

    • 設計図書との整合性確認: 施工図、工事計画などが設計図書に合致しているかどうかの確認。

    • 品質管理: 材料の品質確認、施工方法の検査、試験の立会い、品質基準の遵守確認。

    • 工程管理: 工事進捗の確認、スケジュール遅延の早期発見と報告、工期遵守のための助言。

    • 安全管理: 労働安全衛生基準の遵守状況確認、危険箇所の指摘、安全対策の助言。

    • 出来高確認と支払い承認: 定期的な工事出来高の確認、請負業者への支払い申請に対する承認。

    • 設計変更・追加工事への対応: 設計変更の妥当性確認、追加工事の必要性判断と費用・工期への影響評価。

    • 会議への参加と報告: 定期的な現場会議への参加、発注者への進捗・品質・安全に関する定期報告。

    • 引渡し・竣工検査: 竣工検査の立会い、是正指示、引渡し承認。

    • 瑕疵対応: 瑕疵期間中の対応、修補の確認。

  • 監理報酬と支払い条件: 総監理報酬、支払いスケジュール(出来高払い、定額、時間単価など)、支払い通貨、為替リスクの取り扱い、支払いの遅延利息。追加業務の報酬。

  • 工期とスケジュール: 監理業務の開始日と終了日、重要な中間目標。

  • 監理者の権限(Authority of Supervisor): 工事の一時中止命令、施工方法の指示、資材の撤去命令、検査・試験の要求など、監理者が現場で行使できる具体的な権限。

  • 発注者の義務: 情報提供義務(設計図書、契約書など)、承認義務、監理者への協力義務。

  • 監理者の責任と専門家賠償責任保険: 監理者の過失による損害に対する責任範囲、専門家賠償責任保険(Professional Liability Insurance / E&O Insurance)の加入義務。

  • 秘密保持(Confidentiality): プロジェクトに関する機密情報の取り扱い。

  • 契約解除条件: 契約違反、不可抗力などによる契約解除の条件、通知期間、違約金。

  • 準拠法と紛争解決: 契約に適用される法律、紛争が発生した場合の解決方法(裁判、仲裁、調停など)。

  • 適用される建設基準・法規: 建築基準、労働安全衛生法、環境規制など、工事および監理業務に適用される現地の法規の遵守義務。

国際建設プロジェクトにおいて工事監理契約書が特に重要なのは、以下の理由からです。

  • 品質と安全の確保: 海外での建設は、日本の基準と異なる場合が多く、品質や安全への意識も様々です。独立した監理者が設計図書通りに施工されているか、品質が確保されているかを厳しくチェックすることで、建物の安全性と信頼性を高めます。

  • 発注者利益の保護: 発注者が現地に常駐できない場合でも、監理者が発注者の代理として現場を監督し、請負業者が契約通りに工事を進めているかを確認することで、工期遅延やコスト超過、品質不良などのリスクから発注者を保護します。

  • 法規制と商慣習の違いへの対応: 各国で建設基準、労働安全衛生法、監理者のライセンス制度などが異なります。これらの違いを理解した監理者が業務を行うことで、法的リスクを回避し、現地の法規を遵守できます。

  • 透明性と説明責任の確保: 定期的な報告や会議を通じて、発注者は遠隔地からでもプロジェクトの状況を正確に把握し、意思決定を行うことができます。

  • 紛争の未然防止と解決支援: 監理者は、請負業者との間の技術的な問題や解釈の相違を早期に発見し、適切な助言を行うことで、潜在的な紛争の発生を未然に防ぎます。また、紛争が発生した際には、客観的な立場から事実確認や調停を支援します。

英文工事監理契約書の特徴と和文契約書との違い

国際的な工事監理取引では、多くの場合、英文で契約書が作成されます。その特徴は、日本の和文契約書とは異なる点がいくつかあります。特に、FIDIC(国際建設コンサルタント連盟)の「ホワイトブック」(FIDIC Client/Consultant Model Services Agreement)などの標準契約約款がベースとなることが多く、その構造と用語には独特の慣習があります。

  • FIDIC (Fédération Internationale Des Ingénieurs Conseils) 契約約款の参照:

    • 国際プロジェクトでは、FIDICの各種契約書(特にホワイトブック)が広く参照されます。これらの約款は、監理者の役割、権限、責任範囲が詳細に定義されており、特に中立性と客観性が重視されます。翻訳する際には、これらの標準約款の用語や概念に対する深い理解が不可欠です。

    • 日本の工事監理契約書は建築士法に基づくものが多く、比較的定型的なものですが、FIDIC契約は非常に詳細で網羅的です。

  • 監理業務の範囲(Scope of Services)の明確化:

    • 品質管理、工程管理、安全管理、出来高確認、支払い承認、設計変更への対応、報告業務など、監理者が提供する具体的なサービス内容が非常に詳細に列挙されます。

    • 「工事監理」と「施工管理(Construction Management)」の明確な区別が重要です。工事監理は設計図書との適合性確認が主であるのに対し、施工管理は請負業者側の責任として工事を計画・実行・管理する業務です。翻訳の際に混同しないよう注意が必要です。

  • 監理者の権限(Authority of the Supervisor/Engineer):

    • 工事の一時中止命令、施工方法の指示、不適合資材の撤去命令、追加検査の要求など、現場における監理者の具体的な権限が明確に規定されます。これらの権限は、品質や安全を確保するために極めて重要です。

  • 監理報酬と追加業務の報酬:

    • 監理報酬の計算方法(プロジェクト総建設費のパーセンテージ、定額、時間単価など)、支払いスケジュール、追加業務(例:大規模な設計変更への対応、裁判での証言など)が発生した場合の報酬計算方法が詳細に規定されます。

  • 発注者への報告義務と頻度:

    • 工事進捗、品質検査結果、安全状況、支払い承認状況、問題点、対応策などに関する定期的な報告(週次、月次など)の頻度、内容、報告様式が詳細に規定されます。発注者が海外にいる場合、この報告は状況把握の生命線となります。

  • 監理者の責任(Standard of Care)と専門家賠償責任保険(Professional Liability Insurance):

    • 監理者が負う責任の範囲(通常は「合理的な専門家としての注意義務(Standard of Care)」)が規定されます。

    • 監理者が加入すべき専門家賠償責任保険(E&O保険)の種類、補償範囲、保険金額、保険証券の提出義務が厳密に規定されます。これは、監理ミスや過失による損害が発生した場合のリスクをカバーするために不可欠です。

  • 請負業者との関係:

    • 請負業者に対する指示権限の範囲、情報提供のチャネル、紛争解決における監理者の役割(調停者など)が規定されます。

  • 契約解除(Termination)の事由と効果:

    • 契約違反、不可抗力、発注者の都合などによる契約解除の条件、通知期間、違約金、契約解除時の監理業務の精算、成果物の引き渡しなどが詳細に規定されます。

  • 準拠法と紛争解決(国際仲裁)条項:

    • 契約に適用される法律、紛争が発生した場合の解決方法(国際仲裁、調停、裁判など)および管轄地が明確に指定されます。

日本の和文工事監理契約書は、建築士法に基づくものが多く、設計と監理が一体となっていることが多いですが、国際的な契約では、監理業務の独立性や責任範囲がより明確に区分される傾向があります。翻訳においては、これらの違いを理解し、国際的な建設プロジェクトにおける法的・商業的慣行を反映した表現を用いることが不可欠です。

工事監理契約書翻訳における重要ポイント

工事監理契約書の翻訳は、貴社の海外建設プロジェクトの品質、安全、スケジュール、そして法的リスクに直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務・技術・財務・プロジェクト管理に関する視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。

  1. 工事監理業務の範囲(Scope of Supervision Services)と除外業務の厳密な翻訳

    提供される具体的な監理業務の内容(品質確認、工程進捗確認、安全管理、出来高確認、支払い承認、報告業務など)、各業務における監理者の役割、そして監理業務に含まれない除外事項(例:請負業者の施工管理責任、資材調達、具体的な工法選定など)を、技術的・法的に誤解の余地なく厳密に翻訳することが最も重要です。一点の誤訳が、責任範囲の曖昧化や業務のミスマッチ、品質問題の見落としに直結しかねません。

  2. 監理者の権限(Authority of Supervisor)の明確化

    工事現場における監理者の具体的な権限(工事の一時中止命令、不適合資材の撤去命令、追加検査の要求など)を正確に翻訳することが不可欠です。これらの権限が不明確だと、監理者が効果的に機能せず、品質や安全管理が徹底されないリスクがあります。

  3. 監理報酬の計算方法と支払い条件、追加業務報酬の明確化

    総監理報酬、支払いスケジュール(フェーズごと、出来高ごと、または時間単価など)、支払い通貨、為替リスクの負担者、支払いの遅延利息を正確に翻訳することが不可欠です。特に、当初の契約範囲外の「追加業務(Additional Services)」の定義とその報酬計算方法、承認プロセスを厳密に翻訳し、予期せぬ費用発生を防ぐ必要があります。

  4. 監理者の責任(Standard of Care)と専門家賠償責任保険

    監理者が負う責任の範囲(通常は「合理的な専門家としての注意義務」)と、監理者が加入すべき専門家賠償責任保険(Professional Liability Insurance / E&O Insurance)の種類、補償範囲、保険金額、保険証券の提出義務を厳密に翻訳することが不可欠です。これにより、監理ミスや過失による損害発生時のリスクが明確になります。

  5. 発注者への報告義務と頻度、内容: 

    発注者への定期的な報告(週次、月次など)の頻度、報告書に含めるべき内容(工事進捗、品質検査結果、安全状況、支払い承認状況、問題点、是正措置など)、報告様式、そして報告遅延や内容不備があった場合の対応を明確に表現することが重要です。遠隔地にいる発注者がプロジェクトの状況を正確に把握するための生命線となります。

  6. 契約解除(Termination)の事由と効果、未払い報酬の精算

    発注者または監理者からの契約解除の具体的な事由、通知期間、違約金、契約解除時の監理業務の成果物の評価、未払い報酬の精算方法、引き継ぎプロセスを詳細に翻訳することが重要です。

  7. 準拠法と紛争解決条項(国際仲裁)

    契約に適用される法律、そして紛争が発生した場合の解決方法(国際仲裁、調停、裁判など)、仲裁地の選定、仲裁規則、仲裁人の数などを正確に翻訳することが不可欠です。国際仲裁条項は、将来的な紛争解決のプロセスと費用に直接影響するため、専門的な知識が必要です。

  8. AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認

    AI翻訳技術は、初稿の作成や用語の統一に役立ちますが、工事監理契約書のような法的・専門的に極めて複雑な文書、特にFIDICホワイトブックのような国際標準契約約款においては、法的ニュアンス、各国固有の建設法規、専門家賠償責任、工事監理者の権限の考え方を完璧に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、法務知識、国際建設プロジェクトの実務経験、当該国の法規制に関する知見を持つ専門の翻訳者による徹底的なレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、安全な国際建設プロジェクトの基盤となります。

  9. 強固な情報セキュリティ体制

    工事監理契約書には、プロジェクトの進捗、品質検査結果、安全監査情報、財務情報、技術仕様など、企業の競争力やプロジェクトの成否に直結する極めて機密性の高い情報が含まれることが一般的です。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の信用失墜、法的な責任問題など、甚大な損害を被る可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきです。私どもは、お客様の機密情報を最高レベルで保護するため、徹底したセキュリティ管理を実践しています。

  10. 「総コスト」での評価と信頼できる翻訳会社の選定

    翻訳にかかる費用は、単純な料金だけでなく、翻訳後の社内での確認・修正にかかる時間や労力、そして将来的な紛争リスクといった「総コスト」で評価すべきです。初期費用が安価でも、翻訳品質が低ければ、結果的に大きな損失に繋がりかねません。実績、専門性、セキュリティ体制、そして提供されるサービスの質を総合的に判断し、貴社の国際建設プロジェクトにおける戦略的パートナーとして信頼できる翻訳会社を選定することが重要ですし、私どもはこのような観点から、お客様に安心してご利用いただける最適なサービスを提案しています。

  11. 現地の弁護士・コンサルタントとの連携

     翻訳された契約書をベースに、必ず現地の建設法、契約法、専門家賠償責任に関する規制に詳しい弁護士やコンサルタントと連携し、契約内容の法的妥当性、税務上の影響、そしてリスクを最終確認することが不可欠です。翻訳は「理解の橋渡し」であり、最終的な法的判断は現地の専門家が行うべきです。

 

工事監理契約書の翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割

工事監理契約書は、海外建設プロジェクトの品質と安全を確保する上で極めて重要であり、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。

 

ケーススタディ1:海外工場建設プロジェクトの発注(製造業企業)

状況: 日本の製造業企業が、メキシコに新たな工場を建設するため、現地の工事監理専門会社と英文の工事監理契約を締結するケース。

  • 事業開発部/施設建設部:

    • 必要性: 監理業務の範囲(品質、工程、安全)、監理者の権限、報告義務、監理報酬、契約期間、責任範囲などを詳細に確認します。プロジェクトの品質、スケジュール、コスト、そして将来的な工場の運用に直結するため、これらの内容を正確に反映した翻訳が不可欠です。

    • ケース: 契約書に記載された「品質検査の実施頻度と報告様式」や「監理者が工事の一時中止命令を発動できる条件」を和訳で確認し、品質管理体制とプロジェクトのリスクを評価します。過去には、監理者の権限に関する翻訳が曖昧だったため、現場での指示が徹底されず、品質問題が発生した事例がありました。私どもは、このような権限や報告に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  • 法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、リスク管理、特に監理者の責任制限、専門家賠償責任保険の義務、契約解除条件、準拠法、紛争解決(国際仲裁)条項の適切性を確認します。メキシコの建設関連法規、労働安全衛生法、専門家ライセンス制度への対応が求められます。

    • ケース: 契約書に記載された「監理者の専門家賠償責任保険の補償範囲と保険金額」や「監理業務における過失の定義」を和訳で確認し、法的リスクを評価します。

  • 安全衛生部/品質保証部:

    • 必要性: 監理者が行う安全管理業務の範囲、品質管理基準、検査項目、報告内容などを詳細に確認します。自社の安全基準や品質保証体制との整合性を確保します。

    • ケース: 契約書に記載された「現場における安全巡視の頻度と安全報告書の内容」や「資材の品質検査基準とその報告義務」を和訳で確認し、現場の安全・品質管理体制を評価します。

  • 経理部/財務部:

    • 必要性: 監理報酬、支払いスケジュール、追加業務報酬、為替リスク、税金など、財務上の全てのフローを確認し、適切な会計処理と資金計画を行います。

    • ケース: 契約書に記載された「監理報酬の支払いマイルストーン」を和訳で確認し、キャッシュフローへの影響を把握します。

ケーススタディ2:海外インフラプロジェクトの監理受注(建設コンサルタント)

状況: 日本の建設コンサルタント会社が、アフリカ某国での道路建設プロジェクトの工事監理業務を、FIDICホワイトブックをベースとした英文工事監理契約で受注するケース。

  • 国際事業部/プロジェクトマネジメント部:

    • 必要性: 監理業務の範囲、監理報酬、工期、監理者の権限、発注者への報告義務、責任範囲などを詳細に確認します。プロジェクトの収益性、リスク、現場運営に直結するため、これらの内容を正確に反映した翻訳が不可欠です。

    • ケース: 契約書に記載された「FIDICホワイトブックにおける『Engineer』の権限と義務」や「工事監理業務範囲外の業務(例:設計変更の実務設計)」を和訳で確認し、自社の業務範囲と責任を明確にします。

  • 法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、リスク管理、特に責任制限、補償条項、専門家賠償責任保険の義務、契約解除条件、準拠法、紛争解決(国際仲裁)条項の適切性を確認します。アフリカ諸国の法規制や国際プロジェクトの慣習への対応が求められます。

    • ケース: 契約書に記載された「監理者の過失による損害に対する責任上限額」や「紛争解決における監理者の調停者としての役割」を和訳で確認し、法的リスクと対応戦略を評価します。

  • 現場監理チーム/技術部:

    • 必要性: 具体的な工事監理業務の手順、品質基準、検査要件、安全管理計画、報告様式などを確認し、現場での業務を円滑に進めます。

    • ケース: 契約書に記載された「資材の検査方法と合格基準」や「現場での安全基準違反に対する是正指示権限」を和訳で確認し、現場での業務計画を立てます。

よくある質問(FAQ)

工事監理契約書の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。

Q1: 工事監理契約書における「監理業務の範囲(Scope of Services)」の条項は、翻訳でどのように注意すべきですか? 

A1: 監理業務の範囲は、監理者が何を行うのか、何を行わないのかを明確にする最も重要な部分です。翻訳においては、品質管理、工程管理、安全管理、出来高確認、支払い承認、報告業務など、具体的な監理業務の内容とその程度を詳細に、誤解の余地なく表現することが重要です。特に、「施工管理」と混同されやすい業務については、明確に区別し、監理者の独立性を保つ表現が不可欠です。これにより、責任範囲の曖昧化やサービス不足によるトラブルを防ぎます。

 

Q2: 「監理者の権限(Authority of the Supervisor)」に関する条項の翻訳で、特に注意すべき点は何ですか? 

A2: 監理者の権限は、現場での実効性に直結します。翻訳においては、工事の一時中止命令、不適合資材の撤去命令、追加検査の要求、施工方法の指示など、監理者が現場で行使できる具体的な権限を明確に表現することが不可欠です。これらの権限が不明確だと、品質や安全管理が徹底されず、重大な問題発生につながるリスクがあります。また、その権限を行使する際の条件や手続きも確認すべきです。

 

Q3: 国際的な工事監理契約で、「監理者の責任(Standard of Care)と専門家賠償責任保険(Professional Liability Insurance)」はなぜ重要視されますか? 

A3: 監理者の過失やミスによる損害は、工事のやり直しや追加費用、さらには人身事故につながる可能性があり、その影響は甚大です。翻訳においては、監理者が負う責任の基準(通常は「類似状況下における同業の合理的な専門家としての注意義務」)、責任の制限(責任上限額など)、そして監理者が加入すべき専門家賠償責任保険(E&O保険)の種類、補償範囲、保険金額、保険証券の提出義務を厳密に表現することが極めて重要です。これにより、万一の事故発生時のリスク分担が明確になります。

 

Q4: 契約期間中の「発注者への報告義務」に関する条項は、どのように注意して翻訳すべきですか?

A4: 発注者が海外にいる場合、監理者からの報告はプロジェクトの状況を把握するための生命線です。翻訳においては、報告の頻度(週次、月次など)、報告書に含めるべき内容(工事進捗、品質検査結果、安全状況、支払い承認状況、問題点、是正措置など)、報告様式(書面、オンラインシステムなど)、そして報告遅延や内容不備があった場合の対応を明確に表現することが重要です。透明性と説明責任を確保し、適切なタイミングでの意思決定を支援します。

 

Q5: 工事監理契約書で「準拠法と紛争解決」の条項が非常に重要と言われるのはなぜですか? 

A5: 準拠法(Governing Law)は、契約の解釈、有効性、義務の履行、そして違反時の法的効果を判断する際に適用される法律です。国によって建設法規、契約法、工事監理者の責任に関する考え方などが大きく異なります。準拠法を誤ると、契約条項の法的有効性が失われたり、予期せぬ義務が生じたり、あるいは紛争解決が著しく困難になったりする可能性があります。また、紛争解決方法として国際仲裁を選択する場合、その仲裁地、仲裁機関、仲裁規則、仲裁判断の拘束力も極めて重要であり、専門的な知識をもって正確に翻訳・理解する必要があります。

 

まとめ

工事監理契約書の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業が国際市場で建設プロジェクトの品質と安全を確保し、円滑にプロジェクトを進めるための極めて重要な戦略的要素です。英文と和文の契約書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、事業開発、法務、安全衛生、品質保証、経理といった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から私どもはこれを強く認識しています。

特に、工事監理業務の範囲と除外業務の厳密な翻訳、監理者の権限の明確化、監理報酬と追加業務報酬の明確化、監理者の責任と専門家賠償責任保険、発注者への報告義務と頻度、そして準拠法と紛争解決といった条項は、潜在的なリスクを最小限に抑え、国際建設プロジェクトにおける継続的な成功への鍵となります。

 

私どもは、このような複雑な工事監理契約書の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおける工事監理や建設プロジェクトに関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
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契約書翻訳に役立つリンク集

法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

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