スペイン語はスペインや中南米、一部アフリカでも公用語として話されている言語です。話者数でいうと、中国語に次ぎ世界で2番目に話されています。
例えば英語にもイギリス、アメリカ、オーストラリア等で話されているものに少しずつ違いがあるのと同様、一口にスペイン語といっても各地域間で差異があります。
そのため、スペイン語への翻訳をご検討の方には、「最終的な仕向け地はどこか?何人をターゲットとしているのか?」をまず明確にしていただくことが、効果的な翻訳へとつながります。
スペインのスペイン語と中南米のスペイン語で最も大きな違いは、スペインのスペイン語に存在する「Vosotros(あなたたち)」という言葉とそれに付随する動詞の活用形が、中南米のスペイン語には存在しないことです。
中南米では、常にUstedes(あなた方)を使用します。スペインのスペイン語にはVosotrosとUstedesの両方が存在しますが、Vosotrosは家族や友人間などの親しい間柄で使い、Ustedesは初対面やフォーマルな場面で使用します。
そのため、スペイン人の友人たちに対して「Ustedes」を使うと、少し距離があるように取られてしまうかもしれません。
スペインと中南米では、使用される単語にも多少の差異があります。
スペインのスペイン語では、よく英語の「Take」と同義で「Coger」を使用します。例えば、「タクシーに乗る」は「Coger un taxi」と言い、日常的に使用される単語です。
しかし、中南米では、「Coger」は性的・侮辱的な意味が含まれる語とされることが多く、そのため中南米に向けての文書では「Coger」を使うことは推奨されません。
仕向け地を明らかにせずにとりあえずスペイン語に翻訳し、それを展開してしまうと、効果が薄れるどころか悪印象になってしまう可能性があることに留意する必要があります。
その他、スペインと中南米では使用する単語が違うことがあります。
例えば、「車を運転する」はスペイン語では「Conducir(運転) un coche(車)」と言いますが、ラテンアメリカでは「Manejar un carro」と言います。
スペインのスペイン語ではManejarは「管理する(英語でいうManage)」という意味、Carroは「買い物カート、馬車」などという意味になります。
中南米のスペイン語は、地理的な関係から英語の影響を受けていることが多くあります。
これまで主にスペインと中南米全般での一般的なスペイン語の違いについて述べてきました。しかし、さらに細かく見ていくと、中南米の国間でもスペイン語の使われ方が違うケースがあります。
例えば英語でいう「Very」はスペイン語では一般的に「Muy」と言いますが、アルゼンチンでは「Re」という特殊な単語を使用します。
また、アルゼンチン・ウルグアイ、パラグアイなどの国では、スペイン語で一般的に用いられる二人称「Tú」が存在せず、代わりに「Vos」を使用します。また、それに付随する動詞の活用方法も「Tú」とは異なるものです。
本記事では地域によるスペイン語の差異についてご説明しました。
スペイン語には地域差があるということをスペイン語ネイティブスピーカーは理解しており、あまり神経質になりすぎる必要はありませんが、もし特定の国や地域をターゲットにした翻訳をお望みの場合はその旨を翻訳会社にお伝えいただければ、より満足のいく翻訳結果を得られるでしょう。(川嶋)