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外国市場における戦略2W1H【WEBサイト多言語対応 最新基本ガイド1】

作成者: WIP japan|Aug. 19, 2024

 

ルイヴィトンやシャネルなどのブランドバッグを、アジアで最も安く購入できる国はどこでしょうか。一昔前だったら、そこに「日本」という候補は出てこなかったと思います。しかし、現在ではその第一候補として日本が出てくるほど、状況は変わってしまいました。

また、日本は少子高齢化が世界のどこよりも進んだ国です。子どもの頃、日本は「高齢化社会」と習ったかもしれませんが、現在では「超高齢社会」となっています。この先、「日本市場」だけに留まり、「外国市場」に目を向けないのは、大きなビジネスチャンスを逃がすことといえます。

そもそも、「外国市場」とは?そこにおけるターゲットは「誰」でしょうか?外国市場で活躍するには「何」を使って「どのような」戦略が必要でしょうか?

「外国市場の2W1H」を、「外国市場とは?:多言語化と越境化は日本の生存戦略」「Who?:在留外国人や訪日外国人との関係」「What?How?:競争力強化の四本柱」の順にご説明していきます。

 

  1. - 目次 -
    1. 外国市場とは?:多言語化と越境化は日本の生存戦略
    ■日本の人口推移
    ■外国市場は拡大中
    2. Who?:在留外国人や訪日外国人との関係
    ■在留外国人とは
    ■訪日外国人とは
    ■在日/訪日からの帰国者とは
    3.What?How?:競争力強化の四本柱
    ■①WEBサイトの多言語化とSEO対策
    ■②各国へのSNSマーケティング
    ■③海外向け広報
    ■④現場での多言語表示
    ■多言語対応のECサイト構築について
    まとめ

1.外国市場とは?:多言語化と越境化は日本の生存戦略

「外国市場」とは、どのようなものかでしょうか?少し想像してみましょう。

Aさんは今、会社を経営していて、このまま日本国内だけでビジネスを回していくか、外国にも自社製品やサービスを広めていくかで悩んでいます。業種によっては日本国内だけでビジネスを回すこともあるので、この場合は、製造業や観光業など、輸出可能な業態を想像してみましょう。

外国に自社製品やサービスを売り出すにあたり、どのような人をターゲットにして、どのようなマーケティングを行えばよいと思いますか? 

そもそも、この先も日本国内だけでビジネスを回さず、外国にも売り出すことの利点は何でしょうか?

 

日本の人口推移

現在、日本の総人口は減少し続けています。東京都以外に人口増加がみられる都道府県はありません。地方では過疎化が広がっています。日本人口が減少し続けているということは、日本市場も縮小傾向にあるということです。

以下が、都道府県の人口減少率の1位~20位です。2020年10月から2023年10月にかけて、1位の秋田県は-4.78%、2位の青森県は-4.31%の減少率を記録しています。

  1. 出典: 都道府県市区町村 都道府県 人口減少率ランキング
    https://uub.jp/rnk/p_n.html

市町村の単位ではどうでしょうか。以下が、2020年10月から2023年10月の市町村の人口減少率1位~20位です。1位~4位、6位は東日本大震災の原発事故などの問題から福島県双葉郡となっていると考えられますが、5位以降は三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)から離れた地方の市区町村が多く並んでいます。5位の熊本県球磨郡は-24.20%、7位の北海道夕張市は-14.28%の減少率を記録しています。

  1. 出典: 都道府県市区町村 全国の市区町村 人口減少率ランキング
    https://uub.jp/rnk/cktv_n.html

数値でみると、日本人口がかなりの勢いで減少していることがわかります。また、地方の過疎化も広範囲といえるでしょう。

以下は、紀元後800年から2100年までの日本人口の長期的推移です。2000年をピークに急落が予想されていることがわかります。

 

  1. 出典:総務省 我が国における総人口の長期的推移
    https://www.soumu.go.jp/main_content/000273900.pdf

残り少ないパイを取り合うことになりかねない、日本の未来が見えてくるのではないでしょうか。

 

外国市場は拡大中

日本の人口推移については前述のとおりですが、「人口」とは、「言語話者の数」に影響します。国として、日本語を公用語としているのは、日本だけです。日本市場とは、すなわち日本語市場。「日本市場」「日本語市場」「日本人口」はともに比例関係にあり、すべて縮小傾向です。

それでは、「外国市場」「外国語市場」「世界人口」はどうでしょうか。日本人にとっての外国語とは、日本語以外の言語を指します。外国市場とは日本以外の市場。「外国市場」「外国語市場」「世界人口」も比例関係にあり、これらはすべて拡大中です。

国連人口基金によると、2024年の世界人口は81億1000万人を超えると予想されています。(https://www.unfpa.org/data/world-population-dashboard参照)

一方、日本人口は1億2000万人程度。日本市場だけに留まるということは、潜在顧客79億人8000万人を失うことに等しいとも考えられます。

潜在顧客79億人8000万人ものビジネスチャンスは、外国に自社製品やサービスを売り出す大きな利点といえるのではないでしょうか?

 

2. Who?:在留外国人や訪日外国人との関係

「外国」と一言に行っても、様々な国があります。現在国連に加盟している国だけでも193か国あります。

「外国市場」におけるターゲットとは誰でしょうか。大きくは、「在留外国人」「訪日外国人」「在留/訪日からの帰国者」にわけることができます。それぞれについて、定義、関わる法・税制度、ビジネスチャンスとなるポイントをお話ししていきます。

 

在留外国人

在留外国人とは、「出入国管理および難民認定法上の在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人のこと」を指します。在留外国人に関わる法・税制度は、日本の「国内法」や「消費税」です。

在留外国人は、2023年時点で約322万人となっています。これがどのくらいの多さかというと、市区町村で人口トップの横浜市が人口約377万人ですので、一都市ができるくらいの多さといってよいでしょう。

在留外国人はいろいろな国籍の人で構成されていますが、国別でみると、中国→ベトナム→韓国→フィリピン→ブラジルの順に多くなっています。

 

  1. 出典:出入国在留管理庁 令和5年末現在における在留外国人数について
  2. https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00036.html 

また、在留外国人の比率は市区町村ごとで異なります。例として、群馬県大泉町は5人に1人が外国人といわれており、特にブラジル人の人口が多いことでも有名です。

在留外国人の人数は、2023年12月時点では約341万に増加しています。6月では約322万人だったのが、同年12月には約341万人になっており、半年間で約20万人も増加。大きく増加傾向にあることは、注目すべきところでしょう。(https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00040.html参照)

ところで、在留外国人をターゲットにした場合、どのようなビジネスチャンスがあるのでしょうか?以下が、在留外国人が日常生活で困ったことをまとめたアンケート結果です。

 

  1. 出典:出入国在留管理庁 令和2年度在留外国人に対する基礎調査の概要
  2. https://www.moj.go.jp/isa/content/001342229.pdf

日本は多言語での情報発信が少ないといわれていますが、それらが在留外国人のやり取りや情報収集などに影響を与え、日常生活における困難につながっていることがわかります。それぞれの地域でどこの国籍の在留外国人が多いか、その在留外国人の母語が何かを知った上で。現状ある困難を多言語対応で解決していくことに、ビジネスチャンスがあるといえます。

 

訪日外国人

訪日外国人とは、一般的に、観光やビジネスなどで一時的に日本に滞在している外国人を指します。訪日外国人に関わる法・税制度は、日本の「国内法」や「(国内消費以外の)免税」です。日本の免税制度を活用できますが、訪日外国人による購買は、「輸出」に該当します。

円安により外国人観光客が増えたというニュースは耳にしたことがあると思いますが、インバウンド市場は拡大中であり、前述の在留外国人同様に、訪日外国人も増加傾向にあります。 2024年3月では一か月に300万人を超えており、こちらも一都市ができるくらいの多さとなっています。
 

  1. 出典: 日本政府観光局 訪日外客数(2024年3月推計値)
    https://www.jnto.go.jp/statistics/data/20240417_monthly.pdf

国別では、韓国や中国の東アジア圏が多く、欧米圏ではアメリカやカナダが多くなっています。過去5年では、ベトナムやフィリピンなども伸びが目立ち、総数は少ないですが、メキシコの伸率も大きくなっていることがわかります。

以下が、訪日外国人が日本旅行中に困ったことをまとめたアンケート結果です。
 

  1. 出典:Forbes 外国人が「日本で不便に思うこと」 1位は日本人も困るあの環境
    https://forbesjapan.com/articles/detail/63766

日本は観光インフラ不足にあり、Wi-Fi環境不足や多言語対応が遅れているといわれています。こうしたことが、特に旅行中のやり取りや情報収集に影響を与えているこがわかります。

さらにいうと、国や文化ごとで有効なプロモーションは異なります。日本の魅力を伝える際の多言語対応は、一通りではないのです。それらを十分に考慮することは、競合他社の差別化となり、大きなビジネスチャンスにつながるといえるでしょう。

在留/訪日からの帰国者

駐在が完了した在留外国人や観光を終えた訪日外国人など、母国に帰国した方々も、外国市場のターゲットです。在留/訪日からの帰国者に関わる法・税制度は、母国の「現地法」や輸出入で発生する「関税」です。

特に外国人観光客は、帰国後に越境ECサイトで気に入った日本商品を再購入する傾向があるといわれています。リピーターとなる可能性があるのです。「旅アト」(旅行後)は、大きなビジネスチャンスとなります。

旅アトと越境ECに関しては、「訪日観光に必要な多言語対応 -『旅アト』と越境EC -(https://japan.wipgroup.com/media/tabiato)」の記事もご参照ください。

また、在留/訪日からの帰国者に評判を聞いた海外在住の外国人も、外国市場のターゲットとなります。世界中に住む外国人は皆、潜在顧客であるともいえます。

 

3.What?How?:競争力強化の四本柱

外国市場で自社製品やサービスを売り出す際、何が必要でどのようなマーケティングを行うのが良いしょうか。前述のとおり、外国と一言にいっても、多様な国や文化があり、効果的なプロ―モーションも様々です。日本語以外の市場が外国市場であることも考えると、「多言語」でのアプローチは必須であるといえます。

しかし、日本は「外国語化率・多言語化率が低い」というのが現状です。

外国市場における競争力強化には、以下の4つが有効であると考えられます。

  1. ①WEBサイトの多言語化とSEO対策
    ②各国へのSNSマーケティング
    ③海外向け広報
    ④現場での多言語表示

それぞれについて、ご説明していきます。

 

 

①WEBサイトの多言語化とSEO対策

WEBサイトは基本的に、世界中からアクセスできるものではありますが、国や文化、言語の違いにより、発信側の意図したものが受信側に十分に伝わるとは限りません。また、国・言語・文化が違うなら、各国の検索エンジンに適したSEO対策も異なります。受信側の視点に立ったWEBサイトこそ、情報発信力があるといえるのではないでしょうか。

 

②各国へのSNSマーケティング

WEBサイト同様に、SNSマーケティングについても、受信側の国・文化・言語は様々です。また、SNSの利用状況は、年齢層など他の要素も影響すると考えられます。どの年齢層をターゲットにするかで、使用するキーワードやトピックも変わってくるでしょう。ペルソナ設定と多言語対応を十分に行ったSNSマーケティングは、競争力強化の有効な手段といえます。

 

③海外向け広報

発信側のWEBサイトを多言語化するだけでなく、受信側で広く知られる雑誌媒体や情報発信サイトなどを活用することも効果的です。また、影響力のある旅行関連誌や情報発信サイトは各国で異なるため、ここでも国や文化の多様性を考慮することが必要となります。

 

④現場での多言語表示

①~③は、訪日旅行でいうところの旅行前と旅行後に大きく関わりますが、ここ④現場での多言語表示は、記憶に一番残りやすい旅行中に効力を発するといえるでしょう。ビジネスで訪日した外国人をターゲットにした場合は、まさにビジネス中にも、活用してもらうことができます。案内板やパフレットだけではなく、QRコードの活用(例:QR Translator)や音声案内を活用(例:Pokke)も検討できます。

 

多言語対応のECサイト構築について

①~④に加えて、前述で触れたECサイトの多言語化も、外国市場における戦略として有用です。

多言語対応のECサイト構築には、以下の3つがすすめられます。

  1. (1)言語選択:ユーザーの母語でECサイトを活用してもらえます。ユーザーの自動言語判別があればさらに良いでしょう。

  2. (2)通貨選択:ユーザーの国の通貨での購入も可能となりますが、ドルで考える人は多いので、ドル換算を表示するのことが特におすすめです。

  3. (3)ローカリゼーシン:商品説明や利用規約を、ユーザーの地域に合わせて表示することが良いでしょう。

多言語対応のECサイトや越境ECの活用により、リピーターの確保はもちろん、インバウンドだけでなくアウトバウンドにも注力することができ、ひいては輸出力強化につながると考えられます。

 

まとめ

日本市場の縮小と外国市場の拡大の影響は、避けては通れなくなってきています。外国市場が何かを理解した上で、「Who」外国市場の誰をターゲットにして、「What」「How」何を使ってどのように競争力を強化するか、これらグローバルな視点はこの先重要となります。

在留外国人や訪日外国人との関係、WEBサイトの多言語化とSEO対策、SNSマーケティングや海外向け広報、現場での多言語表示の有効性についてお話してきました。リピーター確保がのぞめる多言語対応のECサイト構築も大切です。外国化率・多言語化率が低いという日本の現状は、多言語対応の十分な戦略を取れば、競争力強化につながります。日本の魅力が世界に広く伝わることを願いつつ、本記事がビジネスでも日常生活でもお役に立つことができたら幸いです。

 

  1. 参考文献

  2. 都道府県市区町村 都道府県 人口減少率ランキング
    https://uub.jp/rnk/p_n.html
  3. 都道府県市区町村 全国の市区町村 人口減少率ランキング
    https://uub.jp/rnk/cktv_n.html
  4. 総務省 我が国における総人口の長期的推移
    https://www.soumu.go.jp/main_content/000273900.pdf
  5. 国連人口基金 World Population Dashboard
    https://www.unfpa.org/data/world-population-dashboard
  6. 外務省 世界と日本のデータを見る
    https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/world.html
  7. 法務省 用語の解説
    https://www.moj.go.jp/isa/content/001342798.pdf 
  8. 横浜市 統計情報ポータル
    https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/yokohamashi/tokei-chosa/portal/ 
  9. 出入国在留管理庁 令和5年6月末現在における在留外国人数について
    https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00036.html
  10. 大泉町 大泉町の多文化共生
    https://www.town.oizumi.gunma.jp/s007/kurashi/010/030/100/20200812100640.html
  11. 出入国在留管理庁 令和5年末現在における在留外国人数について
    https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00040.html 
  12. 出入国在留管理庁 令和2年度在留外国人に対する基礎調査の概要
    https://www.moj.go.jp/isa/content/001342229.pdf
  13. 日本政府観光局 訪日外客数(2024年3月推計値)
    https://www.jnto.go.jp/statistics/data/20240417_monthly.pdf
  14. Forbes 外国人が「日本で不便に思うこと」 1位は日本人も困るあの環境
    https://forbesjapan.com/articles/detail/63766
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