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グローバルビジネスの「関所」を突破する:輸出許可証・証明書翻訳の完全ガイド

作成者: WIP japan|Sep. 24, 2025

 

グローバルビジネスの舞台で、自社製品を世界へ送り出すことは、企業の成長戦略において不可欠です。しかし、そこには必ず、各国の厳しい規制という「関所」が待ち構えています。特に、食品、医薬品、化学品など、人の安全や環境に関わる製品を輸出する際には、多岐にわたる許可証や証明書の提出が求められます。

これらの書類は、製品が輸出先の国の基準を満たしていることを証明する、いわば「パスポート」です。しかし、その多くが現地の言語で作成・提出が義務付けられています。不正確な翻訳は、通関の遅延、製品の差し止め、最悪の場合、巨額の罰金や事業からの撤退という致命的なリスクを招きかねません。


この記事では、輸出に必要な許可証・証明書の翻訳について、業界・分野ごとにどのような書類が必要となるのか、そして、スムーズな輸出プロセスを実現するための翻訳のポイントを網羅的に解説します。

 

目次


1. 輸出に必要な「許可証・証明書」とは?

輸出に必要な許可証や証明書は、大きく以下の2つの役割に分けられます。

  • 製品自体の安全性・合法性を証明するもの: 食品の衛生証明書や医薬品の製造販売承認書など、製品が輸出先の国の基準に適合していることを証明します。

  • 企業の適格性を証明するもの: 輸出を行う企業や製造施設が、必要な資格や基準を満たしていることを証明する文書です。

これらの書類は、各国の規制当局が自国民の健康や安全、環境を保護するために設けた、重要な「障壁」であり、そのルールは国や地域、製品カテゴリによって細かく異なります。

2. 業界・分野別:翻訳が必要となる許可証・証明書

 ここでは、特に翻訳の需要が高い5つの業界と、そこで必要となる主な書類、そして具体的なケーススタディをご紹介します。

1. 食品・農産物業界

食の安全は、どの国でも最優先される事項です。そのため、輸出入には厳格な検疫や衛生管理が求められます。

  • 主要な翻訳対象書類:

    • 衛生証明書(Health Certificate): 製品が衛生的基準を満たしていることを証明。

    • 植物検疫証明書(Phytosanitary Certificate): 植物由来の製品が病害虫に汚染されていないことを証明。

    • 動物検疫証明書(Veterinary Certificate): 動物由来の製品が感染症に罹患していないことを証明。

    • 製造施設の許可証・登録証: 輸出元の工場が、当該国の定める衛生基準などを満たしていることを証明。

    • 成分分析証明書、成分表: 製品の成分や栄養価が、現地の基準に適合していることを示す。

  • 輸出先とケース例:

    • EU諸国: 日本の農産物を輸出する際に求められる植物検疫証明書。

    • 米国: 加工食品を輸出する際の製造施設の登録証や成分表。

    • 東南アジア: 精肉や水産物を輸出する際の、輸出元施設の許可証と衛生証明書。

  • ケーススタディ:

    • 日本の米をEUへ輸出: 欧州連合(EU)の厳しい検疫基準をクリアするため、植物検疫証明書の翻訳が不可欠。

    • 日本の加工食品を米国へ輸出: 米国FDA(食品医薬品局)に提出する、製造施設の登録証成分表の翻訳が必要。


2. 医療機器・医薬品業界

国民の生命と健康に直結するため、最も厳格かつ複雑な規制が適用される分野です。

  • 主要な翻訳対象書類:

    • 製造販売承認書(Marketing Authorization): 製品が市場での販売を許可されていることを示す。

    • 製造業許可証(Manufacturing License): 製造工場が当局の認可を受けていることを証明。

    • 販売証明書(Certificate of Free Sale): 輸出国(日本)で合法的に販売されていることを証明。

    • 品質管理システム証明書(例:ISO 13485): 品質管理体制が国際規格に準拠していることを示す。

    • 臨床試験報告書: 医薬品や医療機器の有効性・安全性を証明する膨大な報告書。

    • 取扱説明書(IFU:Instructions for Use): 医療従事者や患者が安全に使用できるよう、現地の言語への翻訳が義務付けられる。

  • 輸出先とケース例:

    • 中国: 医療機器を輸出する際の製造販売承認書や販売証明書。

    • EU(MDR/IVDR): 医療機器指令(MDD)から医療機器規則(MDR)への移行に伴う、技術文書や臨床評価報告書。

    • 米国(FDA): 医薬品を輸出する際の製造施設の登録証やGMP証明書。

  • ケーススタディ:

    • 日本の医療機器を中国へ輸出: 中国国家薬品監督管理局(NMPA)に提出する製造販売承認書取扱説明書の中国語翻訳が必須。

    • 日本の医薬品をEUへ輸出: EUの規制当局に提出する製造業許可証販売証明書、そして臨床試験報告書の膨大な翻訳作業が発生。


3. 化学品・工業製品業界

有害物質管理や環境規制、作業員の安全確保が目的です。

  • 主要な翻訳対象書類:

    • 製品安全データシート(SDS:Safety Data Sheet): 化学品の危険性や安全な取り扱い方法を記した文書。各国の規制に準拠したフォーマットと翻訳が求められる。

    • 化学品登録証明書(例:EU REACH): 輸出先の国や地域で化学品が登録されていることを証明。

    • 試験成績書: 製品の性能や安全性が基準を満たしていることを示す。

    • 製造工程フロー図: 製造プロセスの透明性を証明。

    • 環境・安全に関する認証書(例:ISO 14001)

  • 輸出先とケース例:

    • EU: 新規化学品を輸出する際のEUのREACH規制に基づく登録証明書や安全データシート(SDS)。

    • 米国: 有害物質規制法(TSCA)に関する化学品の通知書や登録証。

  • ケーススタディ:

    • 日本の化学品をEUへ輸出: EUのREACH(化学物質の登録、評価、認可及び制限)規制に基づき、安全データシート(SDS)を現地の言語に翻訳し、提出。

    • 日本の自動車部品をEUへ輸出: RoHS指令(特定有害物質使用制限指令)への準拠を証明する書類の翻訳が必要。

4. 自動車・電子機器業界

製品の安全性や互換性、環境性能を証明する書類が求められます。

  • 主要な翻訳対象書類:

    • 型式認証書(Type Approval Certificate): 製品のモデルが当局の認証を受けていることを証明。

    • 排ガス試験成績書: 自動車の排ガス性能が基準を満たしていることを証明。

    • 電波法認証書: 無線通信機能を搭載した機器が、現地の電波法に適合していることを証明。

    • RoHS/WEEE指令準拠証明書: 有害物質や電子廃棄物に関するEU指令への準拠を証明。

    • 技術仕様書(Technical Specification)

  • 輸出先とケース例:

    • EU: 自動車部品を輸出する際の型式認証書やRoHS指令準拠証明書。

    • 中国: 電子機器を輸出する際のCCC(China Compulsory Certificate)認証関連書類。

  • ケーススタディ:

    • 日本の電子機器を中国へ輸出: CCC(China Compulsory Certificate)認証の取得のため、技術仕様書試験成績書の中国語翻訳が必要。

    • 日本の自動車部品を米国へ輸出: FMVSS(連邦自動車安全基準)への適合を証明する書類の翻訳。

5. 化粧品・トイレタリー業界

消費者の肌に直接触れるため、成分の安全性や製造過程の衛生管理が厳しく問われます。

  • 主要な翻訳対象書類:

    • 製造販売承認書: 製品の販売が許可されていることを証明。

    • 成分リスト: 製品の全成分を記載した文書。

    • 安全性評価報告書: 製品が安全性基準を満たしていることを詳細に報告。

    • GMP証明書: 製造管理・品質管理が適正に行われていることを証明。

    • 動物実験禁止に関する宣誓書: 一部の国では、動物実験を行っていないことを宣誓する書類が必要。

  • 輸出先とケース例:

    • EU: 化粧品を輸出する際のCPSR(Cosmetic Product Safety Report)やCPNP(Cosmetic Products Notification Portal)登録関連書類。

    • 中国: 新規成分を登録する際の安全性評価報告書や製造業許可証。

  • ケーススタディ:

    • 日本の化粧品をEUへ輸出: EUのCPNP(化粧品製品届出ポータル)への登録には、成分リストや安全性評価報告書の翻訳が必要。

    • 日本の化粧品を中国へ輸出: 新規成分の登録申請には、成分の安全性に関する詳細な報告書の翻訳が不可欠。

6. 通関関連

上記に加え、一般的な輸出入に共通して必要な書類です。

  • 主要な翻訳対象書類:

    • インボイス(Invoice)

    • パッキングリスト(Packing List)

    • 船荷証券(Bill of Lading)

    • 原産地証明書(Certificate of Origin)

    • 輸出許可証(Export License)

 

3. なぜ専門の翻訳が必要なのか?

これらの許可証や証明書の翻訳は、単なる言語の置き換えではありません。翻訳の品質が、ビジネスの成否を直接的に左右します。

 

理由1: 専門用語と法律の壁

許可証には、専門的な業界用語、技術用語、そして各国の法務用語が多用されています。一語一句の誤りが、通関の遅延や、最悪の場合、当局からの差し戻しや却下につながる可能性があります。

 

理由2: 認証と公証の要件

多くの国では、提出書類の翻訳に「認証翻訳(Certified Translation)」や「公証(Notarization)」が求められます。これは、翻訳の正確性を公的に証明するもので、これがないと受理されないケースが多々あります。当社では、これらの要件にも対応可能です。

 

理由3: フォーマットの壁

インボイスやパッキングリストなど、特定のフォーマットが要求される書類もあります。現地の書式や記載ルールを理解し、それに合わせて正確に翻訳・作成することが必要です。

 

4. スムーズな輸出プロセスを実現する翻訳のポイント

私たちは、お客様の輸出プロセスを円滑に進めるために、以下のポイントを重視しています。

 

ポイント1: 業界特化の翻訳者チーム

当社の翻訳者は、法務、化学、医療、食品といった各分野の専門知識と実務経験を兼ね備えています。これにより、用語の正確性だけでなく、文書が持つ背景や意図までを深く理解し、的確な翻訳を提供します。

 

ポイント2: 継続的な情報収集

各国の規制は常に更新されています。私たちは、現地の法規制や動向に関する情報を常に収集し、最新のルールに準拠した翻訳を提供しています。

 

ポイント3: 厳格なセキュリティ管理

許可証や証明書は、企業の機密情報です。Pマーク(プライバシーマーク)取得企業として、お客様の機密情報を厳重に管理し、情報漏洩のリスクを最小限に抑えています。

 

まとめ:翻訳は、単なる手続きではなく、輸出戦略の中核

輸出許可証や証明書の翻訳は、単なる行政手続きではありません。それは、貴社の製品がグローバル市場で信頼を得るための、最初の重要なステップです。不適切な翻訳は、時間とコストの損失、そしてビジネスチャンスの喪失を招きます。

当社は、専門知識と豊富な実績に基づき、各国の厳格な規制をクリアするための高品質な翻訳サービスを提供し、貴社のグローバル市場での成功を強力にサポートします。

輸出に必要な許可証や証明書の翻訳でお困りでしたら、ぜひ一度ご相談ください。

ご希望により他の技術文書(仕様書、評価証明、法規解説、GHSラベル、廃棄手順書等)についても対応可能です。お気軽にご相談ください。
ご相談は無料です。いつでもお気軽にご連絡ください。

 

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