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【通関資料翻訳の完全ガイド】失敗しないためのチェックリストから国・業種別の注意点まで徹底解説

作成者: WIP japan|Sep. 16, 2025

 

グローバルビジネスにおいて、海外との取引は企業の成長に不可欠です。しかし、その過程で避けて通れないのが通関手続きです。通関は、単に貨物を通過させるだけでなく、輸入国の法律や規制に適合しているかを証明する、極めて重要なプロセスです。

この通関手続きで必要となるのが、多岐にわたる通関資料です。これらの書類は、単なる事務手続きのためのものではなく、製品の安全性や品質、コンプライアンスを証明する法的文書としての役割を果たします。そのため、翻訳には単なる言語スキルだけでなく、法規制や業界知識が不可欠です。

この記事では、通関資料翻訳で失敗しないための完全ガイドとして、一般的に必要な書類から、国・業種別の注意点、そしてプロに依頼するメリットまで、網羅的に解説します。

 

目次

 

1. 通関資料翻訳の基本:なぜ正確な翻訳が不可欠なのか?

通関資料の翻訳は、なぜそこまで重要なのでしょうか。安易な翻訳がもたらすリスクを知ることで、その重要性が理解できます。

 

通関翻訳を怠る3つのリスク

  • 通関の遅延・停止: 提出書類に不備や誤訳があると、税関での審査がストップし、貨物の到着が大幅に遅れます。これは、サプライチェーン全体に影響を及ぼし、ビジネスチャンスの損失につながります。

  • 法的・金銭的リスク: 誤った成分表示や虚偽の申告とみなされた場合、多額の罰金が課されたり、最悪の場合は製品が差し戻し・廃棄処分となったりする可能性があります。

  • 企業の信頼失墜: 取引先や現地の当局に不完全な書類を提出することは、企業のコンプライアンス意識が低いとみなされ、国際的な信頼を失う原因になります。

 

2. 通関で一般的に必要となる書類一覧と翻訳のポイント

国や製品を問わず、輸出入の際に翻訳が求められることが多い主要な書類は以下の通りです。

書類名 内容 翻訳のポイント
インボイス(商業送り状) 製品の品名、数量、価格、取引条件など 正確な金額、通貨、HSコード(品目分類コード)の表記が重要です。
パッキングリスト(梱包明細書) 貨物の梱包内容や個数、重量など 中身と数量が正確に一致していることが不可欠です。
船荷証券(B/L)/航空貨物運送状(AWB) 運送業者によって発行される貨物の受領書 船積書類の基本であり、記載内容に誤りがないよう注意が必要です。
原産地証明書 貨物の原産国を証明する書類 関税の優遇措置を受ける際に必須。公式な書式に従った翻訳が求められます。
検査証明書 製品が特定の基準を満たしていることを証明 検査項目や結果の数値、専門用語を正確に訳す必要があります。

 

 

3. 【国・地域別】通関翻訳の注意点と追加資料

輸入国の独自の法規制や認証制度により、上記に加えて特定の書類の提出や翻訳が義務付けられることがあります。

欧州連合(EU)

EUは、製品の安全性を厳格に管理しています。

  • 適合宣言書(Declaration of Conformity): CEマーキングの対象となる製品(機械、電子機器、医療機器など)をEUに輸出する際、EUの法令に適合していることを宣言する書類です。各国の公用語への翻訳が義務付けられています。

  • SDS(安全データシート): 化学品を扱う場合、EUのREACH規則CLP規則に準拠した形式で作成し、EU加盟国の現地語に翻訳する必要があります。

米国

広大な市場を持つ米国ですが、連邦政府と州政府の規制に注意が必要です。

  • FDA(食品医薬品局)関連資料: 食品、医薬品、医療機器、化粧品を輸出する際、FDAの定める規格や規制に準拠した詳細な資料が必要です。これには、成分表、製造工程表、品質管理に関する文書などが含まれ、多くの場合、厳格な英語への翻訳が求められます。

  • TSCA(有害物質規制法)関連資料: 有害物質規制法(TSCA)の対象となる化学品は、その規制に準拠したSDSや技術資料を提出する必要があります。

  • 州ごとの規制: 例えば、カリフォルニア州の「Proposition 65」のように、特定の化学物質を含む製品に対して独自の警告表示を義務付けている州があります。これらの要件に合わせた翻訳が必要です。

中国

中国は、独自の認証制度と厳格な言語表示規制を設けています。

  • CCC(強制製品認証)関連資料: CCC認証の対象となる電気製品や自動車部品などを輸出する際、認証のための試験報告書や技術資料の中国語への翻訳が必須です。

  • 成分表・ラベル表示: 化粧品や食品、化学品は、中国の国家標準(GB規格)に準拠した中国語の成分表やラベルが必要となります。

東南アジア(ASEAN)

ASEAN各国は、それぞれ独自の法規制を持っています。

 

  • ベトナム: 品質検査証明書や輸入許可証など、ベトナム語での書類提出が求められることが多く、SDSもベトナム語で作成する必要があります。

  • タイ: タイ工業規格協会(TISI)による認証制度があり、製品によっては規格に準拠したタイ語の技術資料が求められます。

 

4. 【業種別】通関翻訳の注意点と特殊な資料

製品の種類によって、通関時に必要となる専門書類は全く異なります。

 

食品・飲料

食品は人々の健康に直結するため、各国の食品衛生法や表示基準に厳密に準拠した書類が必要です。

  • 原材料リスト: すべての原材料を、輸入国の規制に準拠した形式で記載します。

  • 製造工程表: 製品がどのように製造されたかを詳細に説明します。

  • 栄養成分表示・アレルギー情報: 栄養成分やアレルゲン情報を、輸入国の法律で定められた表示基準に合わせて翻訳します。

化粧品

化粧品は、成分表示が国際的に統一されている一方で、細かな規制は各国で異なります。

 

  • 成分表(INCI表記): 国際的なINCI表記に加え、輸入国の言語での一般名表記や、特定の成分に関する注意書きを追記する必要があります。

  • 製品規格書・安全性試験資料: 製品の特性や安全性を証明する文書で、各国で定められた安全性基準に準拠した翻訳が求められます。

機械・電子機器

機器の安全性に関する基準が重要となります。

  • 取扱説明書技術仕様書: 機器の安全な使用方法や技術的な詳細を記載した文書です。輸入国の言語への翻訳は、法令遵守とユーザーの安全確保のために不可欠です。

  • 試験成績書: 製品が特定の安全規格(CE、UL、PSEなど)に合格していることを証明する書類です。

医療機器・医薬品

医療機器や医薬品は、人命に関わるため、最も厳格な規制が適用されます。

  • 製造販売承認書: 製品が輸入国で販売を許可されていることを示す書類です。

  • 臨床試験データ: 製品の有効性や安全性を証明するための試験データです。

  • 添付文書: 医薬品や医療機器の使用方法、副作用、注意点などを記載した文書で、各国の規制当局への提出のために厳密な翻訳が求められます。

 

分野・業界業種別、取扱説明書の翻訳が必要となるシーン

通関資料翻訳の料金は、翻訳する言語の組み合わせ、文字数、そして専門性の高さによって変動します。

 

  • 翻訳料金の目安: 日本語文字数ベースで、1文字あたり18円〜30円が一般的な目安です。SDSや医療機器の資料など、専門性が高いほど単価は高くなります。

  • 費用対効果: 専門的な翻訳にかかる費用は、通関の遅延によるビジネス機会の損失や、罰金といったリスクを回避するための「保険」として考えることができます。正確な翻訳は、円滑なビジネス展開への投資です。

 

6. ケーススタディ:通関翻訳で成功した事例

依頼主: 大手化粧品メーカー


目的
: 中国市場への新規参入

課題
: 中国向け製品の化粧品監督管理条例(CSAR)に準拠した書類作成と翻訳。特に、成分表示や製造工程表の厳格な規制への対応が難航。

当社の対応:

  • 徹底した規制調査: 中国の最新の化粧品監督管理条例を詳細に調査し、製品の成分や配合に関する規制を確認。

  • 専門家による翻訳: 中国の法規制に精通したネイティブ翻訳者が、成分表をGB規格に準拠した中国語で作成。

  • DTP作業: 現地のラベル表示基準に合わせて、文字のフォントやサイズ、表示順序を調整。 結果: 完璧な書類で、スムーズに税関審査を通過。予定通りの市場投入が実現し、中国でのビジネス展開を成功させることができました。

 

7. 通関資料の翻訳に関してよくある質問(FAQ)

Q1. 自社で翻訳してはダメですか?

A1. 決して不可能ではありませんが、大きなリスクが伴います。通関資料には、法規制や技術的な専門用語が多く含まれており、誤訳や記載漏れが法的リスクにつながる可能性があります。専門知識を持たない翻訳は、通関の遅延や、最悪の場合は製品の差し戻しを招く恐れがあります。

 

Q2. 翻訳にどのくらい時間がかかりますか?

A2. 書類の量や専門性、言語によって異なります。一般的な書類であれば数日から1週間程度ですが、医療機器の添付文書やSDSのように専門性の高い文書は、数週間を要する場合があります。

 

Q3. 料金はどのように決まりますか?

A3. 主に日本語の文字数(または英語の単語数)と、内容の専門性、納期によって決まります。正確な料金は、原稿を拝見した上で個別にお見積りいたします。

 

 

まとめ:通関資料の翻訳はビジネスの生命線

通関資料の翻訳は、単なる手続きではなく、企業のコンプライアンスと国際ビジネスの円滑な進行を保証する重要なプロセスです。安価な単純翻訳に頼ることは、目先のコストを削減しても、最終的に多大なリスクを招くことになりかねません。

当社の専門家は、各国の法規や業界特有の専門知識を深く理解し、お客様のグローバルビジネスを法的なリスクから守るための最適な翻訳を提供しています。通関資料の翻訳でお困りの際は、ぜひ当社にご相談ください。

 

ご希望により他の技術文書(仕様書、評価証明、法規解説、GHSラベル、廃棄手順書等)についても対応可能です。お気軽にご相談ください。
ご相談は無料です。いつでもお気軽にご連絡ください。

 

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