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翻訳業者に依頼 (2):正式発注発注時と納品後の確認ポイント|WIPジャパン

作成者: WIP japan|Sep. 09, 2020

 

信頼できそうな翻訳会社・翻訳業者が見つかりそうだけど、正式発注前に知っておくべきことは?著作権や秘密保持はどうなっているの?発注前に、翻訳料金以外に確認すべきことも結構あるものです。また、納品後にはどのようなプロセスがあると想定したらよいのでしょうか。

 

正式発注から納品、そして同じ翻訳業者へ2回目の発注において、ポイントとなる注意点をまとめました。翻訳を依頼する際の参考となりましたら幸いです。


なお、発注前に確認しておくべきことについては、「翻訳業者に依頼 (1):はじめて発注する時の注意事項14点」のページにまとめていますので合わせてご活用ください。

 

    【目次】
  1. 1. 正式発注時に確認すべきポイント
  2.   1-1. 翻訳対象の原稿の全文字数を調べておく
  3.   1-2. 翻訳料金と見積金額が違っていないか調べる
  4.   1-3. 翻訳の納期を事前に確認しておく
  5.   1-4. 翻訳物の著作権を理解しておく
  6.   1-5. 翻訳者の情報を確認する
  7.   1-6. 納期を遅めに設定して割引を利用する
  8.   1-7. 翻訳会社の守秘義務を確認する
  9.   1-8. 機密性の高い文章の場合は注意する
  10.  
  11. 2. 納品後にチェックすべきポイント
  12.   2-1. 納品後チェックを効率的に進める
  13.   2-2. 原文と翻訳文の対応関係を点検する
  14.   2-3. 文字の綴り・スペリングを点検する
  15.   2-4. 翻訳ミスなどの瑕疵がないかどうか調べる
  16.   2-5. 機械翻訳での二重チェックを行う
  17.   2-6. 翻訳のブラッシュアップを依頼する
  18.   2-7. 翻訳結果のリライトは早めに依頼する
  19.   2-8. 特殊な文字を使用する言語は注意する
  20.  
  21. 3. 再度、同じ翻訳会社に発注する際のポイント
  22.   3-1. 優遇制度を利用する
  23.   3-2. 前回の反省点を踏まえる
  24.   3-3. 前回と同じ翻訳者を指名する

1. 正式発注時に確認すべきポイント

1-1. 翻訳対象の原稿の全文字数を調べておく

翻訳会社・業者に正式に発注する時のチェックすべき点の1つに、文字数のチェックが挙げられます。

一般的に翻訳料金は、元原稿が日本語の場合には「1文字あたりいくら」、英語などの場合には「1ワードいくら」という設定のもとに算出されます。

翻訳会社に正式に発注する時には、あらかじめ文字数をチェックしておき、翻訳会社の算出したカウント数と同じかどうか確認するとよいでしょう。もし数字が異なっている場合には、翻訳会社にその旨を伝えて納得してから発注するとよいでしょう。

文字数は、Wordや専用のソフトウェアなどで簡単にチェックできます。また、文字数をチェックできるWebサイトもあります。以下は、文字数がチェックできるWebサイトです。

・モジモジチェッカー
 http://www.first-moon.com/mojimoji.html
・文字数カウンタ

 http://www2u.biglobe.ne.jp/~yuichi/rest/strcount.html
・自動文字数チェッカー【フリー】
 http://www.dental-clinic.com/cgi/mozi/

 

1-2. 翻訳料金と見積金額が違っていないか調べる

翻訳会社に正式発注する際には文字数の確認の他に、料金が見積金額と異なっていないかどうかのチェックもしておきましょう。

翻訳会社にあらかじめ見積りをとっていても、実際の翻訳料金と異なってくる場合があります。原因としては、翻訳会社が想定していた分量が予定よりも多かった場合や、原稿の専門性が想定よりも高かった場合などが挙げられます。

実際の料金が見積金額と異なっていた場合には、どの点が割増しになったのかを確認し、納得してから正式に発注するとよいでしょう。

 

1-3. 翻訳の納期を事前に確認しておく

いついつまでに翻訳を仕上げなければならないかを明確にし、遅れのないように密に確認する必要があります。

 

特に、納品後には検収と修正(直し)というプロセスがあることを、しっかりと前提に含めておく必要があります。翻訳会社に修正(直し)をしてもらう必要がある場合には、どのような流れで、どのくらいの期間で対応可能か、事前確認しましょう。

 

1-4. 翻訳物の著作権を理解しておく

翻訳された文章には、原文とは別に、二次的著作物の著作権が発生します。

 

日本の著作権法では「著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。」と規定されています。つまり、翻訳された文章の著作権は、基本的には翻訳会社(翻訳者)に帰属します。


例えば、日本語の文章を英語に翻訳した場合、翻訳者は英語の二次的著作権を持つことになります。しかし著作権法には、翻訳前の原著作物の著作者が、その二次的著作物の利用に関して、二次的著作物の著作者と同じ種類の権利を有することも規定しています。そのため、翻訳の依頼主が英語に翻訳された文章を後から編集したりすることは一般的に問題ないと解釈されます。

翻訳会社の中には、翻訳結果の著作権を放棄するとあらかじめ宣言している会社もあります。他方、著作権は放棄しませんと宣言している会社もあります。

 

翻訳依頼の際には、著作権の扱いについても事前に確認し、合意を得ておくことが、不意のトラブルを防ぐコツといえます。

 

1-5. 翻訳者・チェッカーの情報を確認する

翻訳者・チェッカーの詳しい経歴などを公開している翻訳会社は少ないです。

また詳細情報は公開せずに、翻訳者の一部の個人情報のみ公開している場合もあります。

 

例えば、留学経験や専門分野、あるいは対応言語といった情報を公開している会社もありますので、翻訳を依頼する場合に確認すると良いでしょう。

 

1-6. 納期を遅めに設定して割引を利用する

納期を短く設定した場合、それに応じて料金が高くなる場合がありますが、逆に、納期を長めに設定する(あるいは、翻訳会社側に任せてしまう)ことで、割引を適用してくれる翻訳会社もあります。


時間的余裕のある案件については、納期をあえて遅らせ、割引料金で翻訳を依頼するというのも、料金を安価に抑える一つの手段といえます。

 

1-7. 翻訳会社の守秘義務を確認する

多くの翻訳会社は、情報の守秘義務を遵守することを宣言しています。

 

特に依頼者が法人である場合は、正式な守秘義務契約を締結することがあります。翻訳における守秘義務とは、契約後に顧客の秘密情報が第三者に漏れるのを防ぐことや、情報を不正に使用しないといったことが挙げられます。


またウェブサイトに記載されている守秘義務よりも、情報の扱いに関してより詳しく決めておきたい場合に、別段の秘密契約を結んでおくこともできます。

 

1-8. 機密性の高い文章の場合は注意する

翻訳会社は、基本的に守秘義務の遵守を重んじ、顧客情報を厳重に管理します。

 

翻訳する文書にも機密性・重要性が高い書類も多いため、守秘義務厳守の信頼性は翻訳会社にとって翻訳スキルと共に重視される要素といえます。


守秘義務に関する事項はウェブサイトで説明している場合などがほとんどですが、翻訳依頼者が法人の場合、必要に応じて書面での守秘義務契約の締結に応じるところも少なくありません。なお、直属社員の他に外部の翻訳者に翻訳作業を委任するタイプの翻訳会社・翻訳業者は、外部の翻訳者ともやはり守秘義務契約を結んでいる場合がほとんどです。

 

2. 納品後にチェックすべきポイント

2-1. 納品後チェックを効率に進める

翻訳結果が戻ってきたら、その内容が正しいかどうか確認するとよいでしょう。

 

翻訳結果をそのまま鵜呑みにするのはなるべく避けたいところです。それでは、どのようなチェックが方法があるでしょうか。


手近なものとしては、翻訳ソフトを使う方法が挙げられます。翻訳会社の翻訳した内容と、翻訳ソフトを使って自動で機械翻訳した内容を比較します。例えば、翻訳会社の翻訳した文章が肯定文で、翻訳ソフトが自動翻訳した文章が否定文だった場合には、どちらかが誤った翻訳をした可能性があると判断できます。

 

また、翻訳サイトやWordのスペルチェック機能などを使えば簡単なスペルミスを見つけることもできます。

 

2-2. 原文と翻訳文の対応関係を点検する

翻訳結果が戻ってきた時にチェックすべき点の1つに、元の文章に対応した翻訳文があるかどうかのチェックが挙げられます。


例えば、元の文章の数が100で、翻訳された文章の数が90だった場合、もしかしたら翻訳されていない箇所のある可能性(訳抜け)があります。

 

しかし、翻訳者あるいはチェッカーが2つの文章を1つの文章にまとめた方がよいと判断して翻訳した場合には、元の文章の数よりも翻訳された文章の数の方が少なくなります。同じような理由で、元の文章が長いため2つの文章に分けて翻訳した場合には、元の文章の数よりも翻訳された文章の数の方が多くなります。


いずれにしても、元の文章に対応した翻訳文があるかどうか、文章ごとにチェックするとよいでしょう。

 

2-3. 文字の綴り・スペリングを点検する

翻訳結果が戻ってきたら、翻訳された単語の綴りのチェックもしておきましょう。

特に綴りのチェックをしたいのは、人名や社名、専門用語などです。人名や社名は、一般的に用いられている綴りと異なる綴りの場合があります。あらかじめ特殊な綴りであることがわかっていれば、翻訳依頼時にその旨を伝えておくとよいでしょう。


また、英語の場合には大文字と小文字を使い分けた書き方があります。一般的に、論文の見出しなどでは名詞や動詞、形容詞、副詞は、単語の頭文字を大文字にする「キャピタライゼーションルール」を用いることがあります。このような書き方になっているかどうかもチェックするとよいでしょう。

 

2-4. 翻訳ミスなどの瑕疵がないかどうか調べる

翻訳結果が戻ってきたら、翻訳その他にミスがないか、依頼内容と異なる部分がないか、といった点についてチェックを行う必要があります。

 

主にチェックする項目として、次のようなものが挙げられます。


・元の文章に対する翻訳文があるか
・綴りは正しいか
・大文字、小文字の使い方は正しいか
・表組、グラフなどが正しく翻訳されているか
・見出し、注意書きなどが翻訳されているか
・人名や社名など、固有名詞の翻訳は正しいか

この他に、翻訳ソフトの翻訳結果と比較してみたりするのもよいでしょう。

翻訳時のミスに分類される事項は、翻訳会社の側で修正を請け負う場合が一般的です。ただし受け付ける期間が納品後一定期間内に限られている場合が多いため、事前に確認が必要です。

 

2-5. 機械翻訳での二重チェックを行う

翻訳後にチェックすべき点の1つに、機械翻訳での二重チェックが挙げられます。

 

機械翻訳は、翻訳ソフトを用いたり、翻訳サイトを利用したりして、機械的に翻訳することです。翻訳ソフトは、有償のものもあれば、無償のものもあります。翻訳サイトの多くは無償で利用できます。

 

翻訳ソフトには、辞書登録機能が付いている場合があります。人名や社名、専門用語などを登録しておけば、次からは登録した内容が翻訳結果として表示されます。また、別途販売している法律や経済、医学などの専門用語を追加することもできます。


機械翻訳での二重チェックでは、翻訳ソフトなどを使って単語の綴りミスや固有名詞の表記誤りなどを行います。訳文の言語に精通していない場合は、訳された原稿を元の言語に翻訳し直してみるのもよいでしょう。ただし、言語によっては自動翻訳の精度が高くない場合がありますので、翻訳が間違っていると判断してしまうのではなく翻訳会社に念のため確認してもらう程度としておきましょう。

 

2-6. 翻訳のブラッシュアップを依頼する

リライトは「書き直す」という意味ですが、翻訳においては二つの意味で用いられます。ひとつは、一度翻訳された文章をより洗練された文章・専門性の高い文章に改良してもらう場合(ブラッシュアップ)。もうひとつは、一度翻訳して納品してもらった文章が期待していた品質よりも低く、再度書き直しをしてほしい場合です。


翻訳会社の中には、特定分野の専門家でもある翻訳者によるリライト(ブラッシュアップ)サービスを提供している会社もあります。特に翻訳された資料が使用される国の文化や習慣が特殊である場合は、その背景を理解した翻訳者による翻訳が必要といえるでしょう。また、より専門的な内容の正確な翻訳を希望する場合にもブラッシュアップは有用です。

 

ある程度時間が経過すると、発注した翻訳案件の追加工程としては受け付けてくれない場合があります。ブラッシュアップが必要な場合はできれば発注時に指定しておくことが望ましいでしょう。

 

2-7. 翻訳結果のリライトは早めに依頼する

納品後、翻訳された資料の品質に納得できない場合は、一般的にリライト(書き直し)を依頼できます。

 

基本的に翻訳会社はリライトや修正に応じますが、納品完了後から時間が経過すればするほどリライト作業が難しくなります。したがって納品完了後はできるだけ早く翻訳された文章を確認し、自分の希望していたレベルの翻訳がされているかどうかを確認する必要があるでしょう。


また翻訳会社によっては、リライトについて「納品完了後、1週間以内に連絡をお願いします」といった期間を定めている場合もありますので、納品後は早々に内容確認を行いましょう。

 

2-8. 特殊な文字を使用する言語は注意する

アラビア語やチベット語のような、独自の文字体系で記述される言語は、コンピュータに文字が登録されていないために文字化けし、通常の翻訳依頼の流れで正しく発注・納品できない場合もあります。


翻訳会社に翻訳を依頼し、正しく翻訳された文書の納品を受けても、文書ファイルを開くコンピュータに該当の文字セットがインストールされていなければ、文字化けが発生してしまいます。手元のコンピュータの環境も事前にチェックしておきましょう。


ギリシア語やロシア語のように西欧圏に近い国の言語は、文字がインストールされている場合も多いといえますが、タイ語、アムハラ語、ビルマ語、シンハラ語、アルメニア語などの場合は特に要注意です。

 

3. 再度、同じ翻訳会社に発注する際のポイント

3-1. 優遇制度を利用する

翻訳会社の中には、2回目以降の翻訳料金を割引してくれる業者があります

 

割引料は翻訳会社により異なりますが、依頼者にとってはコスト削減になります。これから翻訳会社を探す場合には、このような割引サービスを行っているかどうかもポイントになるでしょう。


なお、2回目以降の翻訳料金の割引以外にも、大量の翻訳、定期的な発注なども割引サービスとしている場合があります。また、翻訳の対象物が過去に依頼した対象物と同じような内容の場合にも割引サービスを実施していることがあります。

 

3-2. 前回の反省点を踏まえる

同じ翻訳会社に2回目の翻訳依頼をする時には、次の点に注意するとよいでしょう。


まず、前回依頼した時に気になった点を思い出します。例えば、納期が遅れた、請求金額が見積金額と異なっていた、などが挙げられます。翻訳会社にその旨を伝え、よく話し合い納得してから発注するとよいでしょう。


次に、依頼者の確認不足によるものもあるでしょう。重要な文書だったにもかかわらず守秘義務の契約締結をしなかった、Word文書ファイルで返却されると思ったのにテキストファイルだった、「ですます」調だと思ったら「である」調だった、などです。これらについても翻訳会社によく確認してから依頼したいものです。


ちなみに、翻訳会社の中には2回目以降の依頼を割引している所があります。そのような割引サービスがあるかどうか確認するとよいでしょう。

 

3-3. 前回と同じ翻訳者を指名する

前回の翻訳結果に満足だったら、また同じ翻訳会社・業者に依頼したいものです。同じ翻訳会社であれば、前回同様に満足できる翻訳結果が期待できます。

 

しかし、100%満足できる結果になるかといえば、そうではありません。一般的に翻訳会社では、複数の翻訳家を抱えています。1回目に翻訳した人が2回目も翻訳するかどうかわからないため、翻訳結果が変わる可能性があるからです。


そこで2回目は、1回目に翻訳した人を指名して依頼するとよいでしょう。翻訳会社が業務履歴を残していれば、同じ人を指名することは容易です。ただし、その人のスケジュールがつまっていれば、納期が遅れる可能性はあります。


翻訳会社には、「前回の翻訳に満足したので、同じ人に翻訳をしてもらいたい」旨を伝えるとよいでしょう。