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お客様ができる翻訳コストカット(その3)|WIPジャパン

作成者: WIP japan|Jan. 15, 2021

 

お客様が翻訳会社に翻訳を依頼されようとした際、「コスト」は最も気になる点の一つかと思います。前回は、以下の「1 Excelでメモリを管理する」ことでコストカットを実現する方法をお伝えさせていただきました。

 

1 Excelでメモリを管理する

2 CATツールを使用する

3 原稿をシンプルにする

4 翻訳のスケジュールを確保する

 

今回はCATツールを使用してコストカットを実現する方法についてお伝えさせていただきます。

 

2 CATツールを使用する

まずCATツールとは何かですが、Computer Assisted Translation(コンピュータ翻訳支援)ツールといって、コンピュータの力を借りて、翻訳作業をより効率的に進めるソフトのことです。

 

代表的なものとしてはMemsource、Trados、MemoQなどがあります。弊社では主にMemsourceとTradosを使用しているため、Memsourceを例にとり説明させていただければと思います。

 

https://www.memsource.com/ja/

 

毎月、定額料金を支払う必要はありますが、Memsourceを導入すると前回お伝えしたExcelで翻訳を管理する方法より効率的になります。頻繁に翻訳を依頼されるお客様にとって検討の価値は十分にあるかと思われます。

 

MemsourceのようなCATツールがあれば、TM(Translation Memory、翻訳メモリ)という原文と訳文の情報が入ったファイルを使用できるにようになるのですが、これがコストカットに結びつきます。ポイントとしては以下の2点です。

 

1)既存の翻訳資産があればTMに読み込む

2)翻訳案件が発生した際はTMを活用する

 

 

1)既存の翻訳資産があればTMに読み込む

過去に社内で翻訳した、あるいは翻訳会社に依頼して翻訳した際の原文と訳文ファイルがあれば、まずはTMにその情報を読み込ませます。これは「色deチェック」などのソフトを使用し、原文と訳文をExcel化して読み込ませるのですが、前回お伝えしたExcelでの翻訳管理と非常に似ておりますので、具体的な方法についてはここでは割愛させていただきます。

 

なお、過去の翻訳資産があったとしても、それらはひとまずおいておき、ある時点から新規でTMを作るというご判断をされてももちろんよいかと思います。

 

 

2)翻訳案件が発生した際はTMを活用する

MemsourceのようなCATツールがあると「解析」という処理を実行することができます。翻訳の見積金額は、原文の文字数あるいはワード数を元に算出されるのですが、この解析処理においてTMを設定して実行することで、今回の原文のボリュームおよび、どれほどの割合で過去の原文とマッチしているかを具体的に、しかも素早く知ることができます。

 

過去の案件と高いマッチ率の文章については、翻訳会社にディスカウントを要求することができるため、どれほどコストを削減できるか見積依頼する前に想定がつくわけです。

 

100%マッチの文章については社内で軽く確認するだけに留め、翻訳会社には一切依頼しないという判断もできるでしょう。翻訳が発生するたびにTMをためていくことで、翻訳資産が増え、その分マッチ率も高くなり、コストカットできるケースも増えていくかと思われます。

 

CATツールを導入しておけば、過去の案件をすぐに調べられるというメリットもあるため、社内からのお問い合わせにも対応しやすくなるかもしれません。頻繁に翻訳案件が発生するお客様は、自社でTMを管理された方が、CATツールの料金を差し引いたとしてもお得になるケースがあるかと思います。

 

なお、CATツールを導入する利点はまだあります。過去訳との表現統一がしやすくなる点や用語集を有効活用できる点はもちろんのこと、翻訳会社からの納品物を各部署に確認する際、効率的に翻訳を管理できるようにもなります。

 

つまり、翻訳の納品物をそのまま各部署に配布するのではなく、MemsourceからエクスポートしたWordのバイリンガルファイル(左列に原文、右列に訳文が記載されたファイル)で配布し、その修正ファイルを再度Memsourceにインポートすることで、TMを自動的に更新することができ、容易にTMを最新の状態に保つことができるのです。

 

次回の翻訳依頼時にこの更新版のTMを翻訳会社に支給することで、翻訳者やチェッカーは最新のTMを参照しながら作業にあたれるわけです。

 

ちなみに、翻訳を依頼されるお客様と翻訳会社が別のCATツールを導入していたとしても、「tmx」というファイル形式でTMをやりとりできるため全く問題はありません。

 

また、もし同じCATツールを導入している場合は、翻訳のプロジェクト自体を共有することもできるため、さらに効率よく翻訳を依頼したり、確認したりすることも可能です。

 

次回は「3 原稿をシンプルにする」、「4 翻訳のスケジュールを確保する」についてお伝えさせていただければと思います。(中後)