海外向けコンテンツの翻訳は、コンテンツの原稿が完成した後の工程だと思っていませんか?
コンテンツを翻訳して情報発信する目的を考えてみると、そこには「マーケティング」があります。翻訳の品質が低ければ、想定読者にメッセージが伝わらず、マーケティングの効果を得られないのはもちろんのこと。ところが、仮に翻訳の品質が高くても、そもそものコンテンツの原稿が日本人視点で作成されていて、海外読者の視点が考慮されていない場合、結局はメッセージが伝わらずに求める効果を得ることができません。
ところで、「求める効果」と書きましたが、マーケティングによって期待できる効果とは何なのでしょうか?「マーケティング」という言葉を聞いて、宣伝、広告、PR、市場調査などを思い浮かべる方が多いと思いますが、マーケティングとはそもそもどういう意味なのでしょう?
マーケティングは顧客の創造
経営学の大家であるピーター・ドラッカー氏は、マーケティングについて次のように述べています。
「マーケティングの理想は、販売を不要にするものである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。」(出典:P.F.ドラッカー『マネジメント【エッセンシャル版】』)
製品やサービスありきではなく、顧客からスタートするのがマーケティングです。顧客自身が価値を感じることができる製品やサービスを作り、そのターゲットに向けて情報を発信すること。それができれば、すなわち適切なマーケティングができれば、おのずから売れるということです。
そして、ドラッカー氏は「企業の目的の定義は1つしかない。それは、顧客を創造することである。」とも言っています。
つまりマーケティングは、顧客のニーズを理解し、それに合わせた製品やサービスをつくり、顧客と市場を創造することと言えるでしょう。
顧客創造のために海外向けコンテンツライティングに必要なこと
冒頭でお伝えしたとおり、コンテンツを作成して翻訳し情報発信する目的は「マーケティング」にあり、「顧客と市場を創造する」ことにあります。
では、どうすればコンテンツの作成と翻訳をマーケティングの目的に叶ったもの、つまり海外の顧客を創造するためのものにすることができるでしょうか。ここでは、マーケティングのためのコンテンツに必要な3つのことをお伝えします。
・ 海外顧客のニーズの把握
顧客のニーズを把握していなければ、情報発信をしても顧客に響くことありません。結果として、顧客を創造することはできません。
・ ターゲット国の文化、価値観、商習慣の理解
日本と海外では、当たり前のように文化や環境の違いがあります。日本で売れたものが他国でも同じように売れるとは限りません。
そこで大事になっているのが、その国の文化、宗教、価値観、そして商習慣を理解することです。
大塚製薬がポカリスエットをインドネシアで発売する際に、まさに顧客を創造したことは有名です。
当時のインドネシアには、スポーツドリンクマーケットが存在しませんでした。そこで大塚製薬は、ポカリスエットをスポーツドリンクとしてではなく「ファーストエイド」のための飲み物として売り出したのです。
デング熱発症による脱水症状の緩和や、ラマダン明けの水分補給のための飲み物としてプロモーション活動を行い、味覚的にもインドネシアの国民性にあわせて甘めにすることで、インドネシア国内では広く親しまれるようになりました。
このように、その国の文化、価値観を理解することによってニーズを把握し、それに合ったコンテンツにすることにより、顧客の創造ができるのです。
・ 常駐翻訳者の活用
より多くの海外顧客にリーチするには、その国の文化や商慣習を理解する必要があります。そのためには、その国の言語をビジネスレベルを超えて使えなければ難しいでしょう。
逆に言うと、ビジネスレベルを超えて、たとえば日常会話を不自由のないレベルで使えるのであれば、その国の文化や価値観、商慣習を本質的に理解していると考えることもできます。
その国の文化、価値観、商習慣を熟知し、言語にも熟達している人材を活用できれば、海外顧客のニーズを把握でき、マーケティングのためのコンテンツライティングと翻訳が可能になります。
そうした人材に翻訳者として組織内に常駐してもらい、一緒にコンテンツづくりに取り組むことで「顧客と市場を創造する」ことができるのです。
常駐翻訳者派遣を活用するメリット
ここで、常駐翻訳者派遣のメリットについてお伝えします。
1. コンテンツの意図をより深く反映した翻訳が得られる
効果的な翻訳には、製品やサービスに対するより深い理解が必要です。
組織内に常駐する翻訳者は組織の一員になります。チームの一員として、たとえば製品開発やマーケティング施策の検討段階からミーティングに参加したり、実際の製品やサービスに販売前に触れたりすることで、製品やサービスの目的や意図をより深く理解することができます。
そして、それらの理解を通して会社のビジョンや考えをも理解することができれば、コンテンツを通して伝えたいメッセージを存分に反映した翻訳をつくることができます。
2. 翻訳者のコンテンツ制作への参加
翻訳者が常駐してチームの一員となるメリットは、翻訳をつくることに対してだけではありません。
上の『顧客創造のために海外向けコンテンツライティングに必要なこと』で書いたとおり、翻訳者は対象国の文化、価値観を理解しています。そうした翻訳者がコンテンツの作成段階から参加することにより、海外想定顧客の視点を考慮したコンテンツをつくることができます。
製品やサービス、会社のビジョン、そして対象国の文化、価値観を理解した翻訳者が、コンテンツの作成から翻訳づくりまで一貫して関わることで、十分なマーケティング効果を期待することができます。
3. 翻訳者とのコミュニケーションのとりやすさ
常駐して他のメンバーと時間と空間を共有することは、円滑でスピード感のあるコミュニケーションにつながります。
翻訳者が翻訳中に疑問に思うことがあったとしても、その場にある実機やサービスに触れたり、すぐに担当者に確認したりすることで、スピード感をもって解決することができます。
些細な疑問であっても解消される機会が多ければ多いほど、製品やサービスへの理解が深まり、翻訳者は品質の高い翻訳をつくることができるようになります。
また日頃の他のメンバーとのやり取りを通して翻訳者の仲間意識や帰属意識が高まることにより、チーム一体となったマーケティング活動につながっていきます。
まとめ
言語を話せる方は社内にもいらっしゃると思います。同じ会社の方であれば、業務に必要な専門用語は知っているでしょうし、会社の意図、背景なども理解しているでしょう。しかし、翻訳するとなれば、専門知識をもち対象国の文化、価値観を理解できていなければなりません。
そこで常駐翻訳者を起用することで、海外顧客のニーズに沿ったより質の高いコンテンツを作成し翻訳できるようになります。それがひいては、海外の顧客創造につながります。