なぜ今、海外リサーチに「定点観測」が必要なのか
多くの日本企業が海外進出を検討する際、まず最初に行うのが「市場参入調査(フィジビリティ・スタディ)」です。現地の人口動態、競合状況、法規制などを網羅的に調べるこの単発調査は、確かに進出の判断基準として不可欠です。
しかし、いざ進出を果たした後、あるいは進出の準備を進めている数ヶ月の間に、現地の市場環境が激変してしまったらどうでしょうか。
現在のグローバル市場は、かつてないスピードで変化しています。SNS発のトレンド、地政学リスクに伴う法改正、急激なインフレ、そして破壊的な競合企業の参入。これらを「点(単発調査)」で捉えるのは限界があります。「線(継続的な定点観測)」で市場を捉えることこそが、デジタル時代の海外戦略における生命線となります。
本記事では、海外リサーチにおける定点観測の定義から、具体的な手法、そしてビジネスに与えるインパクトまでを網羅的に解説します。
目次
1. 定点観測(トラッキング調査)とは何か2. 定点観測が必要となる5つの主要領域
3. 定点観測を導入する4つの大きなメリット
4. 定点観測リサーチの具体的なステップ
5. よくある失敗と注意点
終わりに:当社が提案する「伴走型定点リサーチ」
1. 定点観測(トラッキング調査)とは何か
定点観測とは、同一の調査対象、あるいは同一の質問項目に対し、一定の間隔(毎月、四半期、半年など)を置いて繰り返し実施する調査手法を指します。
「点」の調査と「線」の調査の違い
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単発調査(アドホック調査): 「ある一時点」の断面図を切り取ります。課題が明確な際の深掘りには向いていますが、そのデータが「良くなっている最中なのか、悪くなっている最中なのか」という方向性は見えません。
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定点観測(トラッキング調査): 市場の「健康診断」のようなものです。時間の経過に伴う変化の兆しや、季節性、外部要因との因果関係を浮き彫りにします。
2. 定点観測が必要となる5つの主要領域
海外リサーチにおいて、特に定点観測が威力を発揮する5つの領域について詳述します。
① 競合動向と市場シェアのトラッキング
競合他社は常に動いています。特に新興国市場では、地元企業が驚異的なスピードで技術力を高め、シェアを奪いに来ます。
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価格観測: 競合がいつ、どのタイミングでプロモーションを行い、実売価格をどうコントロールしているかを追跡します。
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棚占有率(Share of Shelf): 小売店やECサイトでの露出度を定期的にカウントし、競合のプッシュ戦略を可視化します。
② ブランド認知度・消費者態度(U&A)調査
消費者の心は移ろいやすいものです。特に日本ブランドに対する信頼感やイメージが、現地のトレンドや政治的背景でどう変化するかを注視する必要があります。
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ブランド想起率(純粋想起・助成想起): 自社ブランドが第一候補として思い出されているか。
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NPS(ネットプロモータースコア): 既存顧客が他者にどれだけ推奨したいと考えているかの推移。
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価値観の変容: サステナビリティへの関心や、健康志向の高まりなど、購買の根底にある動機を追跡します。
③ 法規制・政策・地政学リスクのモニタリング
海外ビジネスにおいて最大の懸念材料は「ルールの変更」です。
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輸入関税・非関税障壁: 突然の税率変更や、検査基準の強化。
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環境規制: プラスチック使用規制、リサイクル義務、炭素税などの導入プロセス。
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知的財産権の状況: 現地でのコピー商品や商標侵害の発生状況を定期巡回。
④ 経済・物流指標の定点観測
コスト構造に直結する数値を「自社基準」で観測します。
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現地調達コスト: 主要原材料の現地市場価格の推移。
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物流・倉庫コスト: 港湾の混雑状況や、ラストワンマイルの配送費用の変動。
⑤ デジタル・ソーシャルリスニング
現地のSNSや検索トレンドは、市場の先行指標となります。
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検索ボリュームの推移: 特定のキーワード(例:「日本酒」「美容液」)の検索数が増えているか。
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ハッシュタグ・トレンド: 現地の若年層の間でどのような文脈で日本製品が語られているか。
3. 定点観測を導入する4つの大きなメリット
メリット1:変化の「兆し」を捉える(先行指標化)
売上が落ちてから対策を練るのでは遅すぎます。定点観測を行っていれば、「ブランド認知度は上がっているが、購入意向が下がり始めている」といった、売上減少の前兆を察知できます。
メリット2:意思決定の「客観的根拠」となる
海外事業の継続や撤退、あるいは追加投資の判断は非常に困難です。定点観測による数値データがあれば、主観や「現地の担当者の勘」に頼らず、経営層に説得力のある説明が可能になります。
メリット3:マーケティング施策の「答え合わせ」ができる
実施したプロモーションや商品リニューアルが、実際に消費者の意識にどう影響したかを時系列で評価できます。失敗した際も、どのタイミングでボタンを掛け違えたのかが明確になります。
メリット4:現地法人・代理店との「共通言語」になる
日本本社と現地法人の間では、しばしば現状認識のズレが生じます。共通の定点観測データを持つことで、事実に基づいた建設的な議論ができるようになります。
4. 定点観測リサーチの具体的なステップ
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目的の明確化: 何の変化を知りたいのか(例:シェアの奪還、法規制への対応)。
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KPI(重要指標)の設定: 追跡する具体的な数値を決めます。
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観測頻度の決定: 週次、月次、四半期、半年など、ビジネスのスピードに合わせます。
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調査手法の選定: ネット調査、訪問調査、覆面調査、統計データの収集など。
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分析とレポーティング: 毎回同じフォーマットで比較し、「前回との差分」に焦点を当てて分析します。
5. よくある失敗と注意点
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指標を頻繁に変えてしまう: 定点観測の価値は「同じ条件での比較」にあります。途中で質問項目を変えると、過去データとの連続性が失われます。
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データの収集が目的化する: グラフを作るだけで終わってはいけません。「変化した原因は何か」「次にとるべきアクションは何か」まで踏み込む必要があります。
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コストと精度のバランス: 全てを調査しようとすると膨大な予算が必要になります。重要な指標を3〜5個に絞り、継続可能なコストで運用することが成功の秘訣です。
終わりに:当社が提案する「伴走型定点リサーチ」
海外リサーチは、1回実施して満足するものではありません。市場という生き物を観察し続けることで、初めて「勝てる戦略」の修正が可能になります。
当社では、世界各国でのネットワークと専門的なリサーチノウハウを活かし、貴社の海外事業に最適化された定点観測プランをご提案しています。
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「現地の競合の動きが不透明で不安だ」
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「自社のブランドが現地でどう思われているか、定期的に把握したい」
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「複雑な法規制の変更を漏れなくキャッチしたい」
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