企業やブランドが国際的な認知度を高めるには、地域ごとの戦略的な広報活動が不可欠ですが、その戦略において「SNS」「インフルエンサー」の存在がますます大きくなっています。
この記事では、国別の人気SNSやインフルエンサーへのアプローチ、多言語対応、AIを用いた分析や営業代行によるプロセスの効率化、SNS以外のグローバルPR戦略についてご紹介します。
目次
- SNSにおけるローカライゼーション
- マイクロインフルエンサー
- インフルエンサーへのアプローチ方法
- インフルエンサーとの合意における注意点
- インフルエンサーへの報酬(オファー)形態
- AI営業代行について
- AI+「パーソナライズ」
- SNS以外のグローバルPR戦略
- まとめ
SNSにおけるローカライゼーション
まず、グローバル規模のPRは、単にウェブサイトやプレスリリースを翻訳するだけでは不十分です。ターゲット国の文化や言語、メディアへの理解が求められ、現地の声を熟知したインフルエンサーとのパートナーシップは強い味方となります。
PRに効果的なSNSやそこで活躍するインフルエンサーとの関係構築も、国によって異なります。
アメリカ
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B2Cで特に若年層に認知された場合はInstagramやTikTok、B2BではLinkedInが特に勧められます。TikTokにはEC機能が併設されており、動画でみた商品のチェックがすぐできるようになっています。
- インフルエンサーへのアプローチは直接的で簡潔なピッチが効果的といわれています。
中国
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B2CではWeChat(微信)やWeibo(微博)、Douyin(抖音)、RED(小紅書)。
B2BではWeChat(微信)やZhihu (知乎)が主流。DouyinやREDにはEC機能が併設されています。
- DMよりも、MCNと呼ばれる専門プロダクションを介したアプローチが効果的といえます。
ブラジル
- B2CではWhatsAppやInstagram、B2BでもWhatsApp。
また、LinkedInなどのインフルエンサーが影響力を持つといわれています。
WhatsAppは日本のLINEのような立ち位置として、日常的なインフラとなっています。 - アプローチは人間味のある内容が好まれる傾向にあります。
フランス
- B2CではInstagramやTikTok、Snapchat、またフランス発のBeRealも人気です。
- B2BではLinkedInやXが主流です。
サウジアラビア
- B2CではWhatsApp、Instagram、TikTok、B2BではLinkedInが影響力を持っているといわれます。
個人的な信頼関係や仲介者を通じた紹介が重視されます。
ラマダン(断食月)の期間中はプロモーションのトーンを変える、肌の露出や宗教的に敏感な話題に注意すると良いでしょう。 - インフルエンサーのライセンス制度が進められており、敬意あるアプローチが好まれます。
適切なパートナーを見つけるため、AIを活用したインフルエンサーのリストアップも有効です。フォロワー数だけでなく、エンゲージメント率、オーディエンス層、過去のブランド提携実績なども効率的に分析できます。
マイクロインフルエンサー
国や商品分野によっては、マイクロインフルエンサー(フォロワー数1万人~10万人)が重要なパートナーとなるかもしれません。特に、ブラジルやサウジアラビアなど、アプローチに温かみや敬意を重んじる国では関係構築により注力できますし、商品がニッチな分野の場合、フォロワー数が多い大手インフルエンサーよりも、エンゲージメント率(シェア、いいね、コメント、保存など)が高いマイクロインフルエンサーの方が適している可能性もあります。
インフルエンサーへのアプローチ方法
- DMを送る 例:アメリカ
- Eメールを送る 例:フランス
- インフルエンサーの所属する専門プロダクションに問い合わせる 例:中国
- AI営業代行を活用する
国ごとでインフルエンサーへのアプローチは様々であるといえるでしょう。
インフルエンサーとの合意における注意点
契約(権利関係)の確認
- コンテンツの二次利用: インフルエンサーが投稿した写真、動画を、自社の広告やウェブサイトで使って良いか、また、その期間について確認
- 独占(競合排除): タイアップ期間中、競合他社の商品を紹介しないといった取り決めをしたい場合は、それが可能か確認
- その他契約内容: 特に専門プロダクションを介した契約は内容が複雑な場合があるため、専門家によるチェックを実施
効果測定(KPI)の設定
- 目的は認知拡大(表示回数、エンゲージメント)なのか、販売促進(クリック数、コンバージョン)なのかを明確にする
インフルエンサーへの報酬(オファー)形態
- ギフティング(商品提供): マイクロインフルエンサーに多い。
- 固定報酬(買い切り型): 大手インフルエンサーへの一般的な依頼方法。
- 成果報酬(アフィリエイト型): 売上の一部を還元する。企業側のリスクは低い。
アメリカでは、FTC(連邦取引委員会)のガイドラインにより、報酬(金銭、商品の無償提供)を受け取った投稿には #ad や #sponsored などの明記が法的に義務付けられています。インフルエンサーへの報酬形態は、国によってルールが異なるため注意が必要です。
AI営業代行について
AIツールは、以下のプロセスを大幅に効率化できます。
- リストアップ: 前述のとおり、インフルエンサーのリストアップに活用できます。
- 文案のドラフト: 過去の成功例に基づき、効果的なピッチ(売り込み)のドラフトを作成します。
- 多言語化: ドラフトの一次翻訳後、人間によるチェックとローカライズを行うと良いでしょう。ポジティブな反応を得られるよう、トーン、スタイル、そして文化的なニュアンスを適応させることができます。
- 送信管理: 予めパーソナライズされたメッセージを計画的に送信し、フォローアップを管理します。
AI+「パーソナライズ」
パーソナライゼーションの観点でもAIは活躍しますが、AI営業代行が効率的だからこそ、メッセージの「本物感」が差別化の鍵となることもあります。
AIが作成したドラフトをそのまま使うよりも、DMなどに追記してパーソナライズすることをお勧めします。
- なぜ選んだか: インフルエンサーの何に感銘を受けたか、ともに何を生み出していけるか
- 価値提案: 商品のPRが彼らにとってどのような価値をもたらすか
AIによる効率化と、パーソナライズされた本物感を組み合わせることで、アプローチの成功率は高まります。
SNS以外のグローバルPR戦略
SNSやインフルエンサーが強力な手段であることは間違いありませんが、伝統的なPR活動も依然としてブランドの信頼性構築に不可欠です。
オウンドメディアとSEO
- インフルエンサーへのアプローチやプレスリリースの前に、自社のウェブサイトをあらかじめ多言語化しておくことが勧められます。
- 現地で使われる検索キーワードを調査し、コンテンツが検索エンジンの上位に表示されるようSEOを最適化します。
メディアリレーションズ
- 現地メディアの関心を引くようローカライズされたプレスリリースを、ターゲット国のオフラインメディア(新聞や業界誌)やオンラインメディアに配信します。業界誌も様々で、技術系スタートアップの場合、アメリカならTechCrunchやVentureBeat、フランスならMaddynessやLes Echos Startを狙うと良いといわれています。
展示会・イベント
- 国際展示会や現地の展示会に出展し、新製品の発表、バイヤーとの商談、メディア露出の機会を獲得します。スタートアップの場合、特にJETROの開催する商談会は有用です。また、展示会出展後のアンケート収集やアフターフォローでも、AIは活躍します。
まとめ
効果的なグローバルPR戦略とは、ローカライズされたオンライン・プレゼンス(オウンドメディアとSEO)と、積極的なアウトリーチ(インフルエンサーやメディアリレーションズ)を組み合わせたものです。
これらにスマートなAI自動化と、専門家である人間が主導する翻訳・ローカライズを組み合わせることで、効率的かつ効果的なグローバルPRが可能となります。