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自治体における翻訳の役割と可能性:多文化共生社会の実現へ|翻訳会社WIPジャパン

作成者: WIP japan|Apr. 21, 2025

 

近年、外国人住民の増加により、自治体が提供する情報の多言語化がますます重要になっています。単なる言語の置き換えにとどまらず、多文化共生の視点から、住民一人ひとりの暮らしを支える「伝わる翻訳」が求められています。

本記事では、自治体が取り組むべき多言語翻訳のポイントを、5つの観点から紹介します。

 

1. 多文化共生/生活サポート系

外国人住民が安心して暮らせるようにするには、日々の生活情報の充実が不可欠です。とくに、日本独特のルールや慣習に馴染みのない方々にとっては、ごみの分別方法や病院の利用方法ひとつとっても、わかりやすい情報があるかどうかで生活の質が大きく変わります。

そのため、自治体が発信する生活情報を多言語化するだけでなく、「誰にでも伝わる」翻訳表現が重要です。やさしい日本語やイラストを交えた資料づくり、動画による補足説明なども効果的です。

 

📌 具体的な翻訳コンテンツの例:
✔ ごみの分別・収集カレンダーの翻訳(英語、中国語、ベトナム語など)
✔ 医療機関案内や受診方法のガイド
✔ 子育て支援、保育園・幼稚園入園の案内
✔ 公共交通の利用方法や時刻表の翻訳

 

2. 防災・緊急対応系

災害大国である日本において、防災情報の多言語化は不可欠です。地震、台風、大雨など、災害の種類が多い日本では、外国人住民がそのリスクや避難の方法を十分に理解していない場合も多く見受けられます。

また、災害時には時間的な余裕がないため、情報の伝達速度や正確さが命に直結することもあります。事前に多言語でマニュアルや避難所の案内を整備しておくことは、行政の大きな責任といえるでしょう。

 

📌 具体的な翻訳コンテンツの例:
✔ 多言語対応の防災マニュアル(紙・PDF形式)
✔ 避難所案内図の多言語表示
✔ 緊急時の音声アナウンスやLINE通知の翻訳テンプレート
✔ ハザードマップの多言語化

 

3. 行政文書・制度案内

外国人住民が日本の制度を理解し、適切に行政手続きを行うには、行政文書の明快な翻訳が求められます。日本語話者にとっても複雑に感じる手続き書類は、翻訳されていなければハードルが一層高くなってしまいます。

とくに引っ越しの際の転入・転出手続き、婚姻や出生などの届け出、税金や保険の申請手続きなど、人生の節目で必要となる書類は正確性が非常に重要です。翻訳と同時に、手続きの流れを図示したり、例文付きの記入見本を用意することで、より分かりやすい情報提供が可能になります。

 

📌 具体的な翻訳コンテンツの例:
✔ 転入・転出届の記入方法ガイド
✔ 国民健康保険、年金、住民税に関する案内書
✔ 就学通知・保育利用申請書類の翻訳
✔ 選挙の案内や投票方法の説明書

 

4. 観光・地域プロモーション

地域の経済活性化やブランディングにおいて、外国人観光客を意識した多言語対応は非常に重要です。観光地の魅力を十分に伝えるには、翻訳精度だけでなく、表現力や文化的な配慮も問われます。

また、近年では紙のパンフレットだけでなく、WebサイトやSNS、音声ガイド、動画コンテンツなど、複数のメディアを組み合わせた情報発信が主流となっています。これらをすべて一貫性を持って翻訳・ローカライズすることで、訪日外国人の満足度向上につながります。

 

📌 具体的な翻訳コンテンツの例:
✔ 多言語観光マップ(観光名所、交通、グルメ、トイレの位置など)
✔ 季節ごとのイベント紹介(祭り、花火大会、体験型ツアー)
✔ 歴史や文化を紹介する看板・案内板の翻訳
✔ 音声ガイドアプリの翻訳とナレーション対応

 

5. 国際交流・教育・文化事業関連

自治体が実施する国際交流イベントや文化事業、学校や地域の教育活動においても、多言語対応は外国人住民の参加促進に直結します。言語の壁を取り除くことで、地域コミュニティとのつながりを強め、相互理解の土台を築くことができます。

とくに、教育分野では学校からの通知や連絡が保護者との信頼関係を築く鍵となるため、誤解のない丁寧な翻訳が必要です。また、文化イベントや講座の案内を多言語で発信することで、多様な住民が地域の文化活動に関われるようになります。

 

📌 具体的な翻訳コンテンツの例:
✔ 外国人向け地域交流イベント(料理教室、スポーツ大会など)の告知文
✔ 小中学校での保護者会案内や学校行事の説明資料
✔ 公民館での講座・ワークショップの案内
✔ 国際交流協会の活動紹介や年次報告書の翻訳

 

まとめ

自治体の翻訳は単なる「言語変換」ではなく、地域の多様性を活かし、共に暮らす基盤を築くためのコミュニケーションです。今後ますます重要性が高まる分野として、翻訳の質と伝え方への工夫が求められています。

 

多言語化は「誰ひとり取り残さない社会」をつくる第一歩です。地域の中で実際にどんなコンテンツから翻訳を進めるか、ぜひ今回の事例と図解アイデアを参考に検討してみてください。