海外市場について調べるとき、政府統計や業界レポート、企業のWebサイト、ニュース記事など、文献や公開情報から得られる情報は数多くあります。
一方で、「実際に現地の人はどう考えているのか」「なぜその商品を選ばないのか」「企業は公開情報とは別に何を重視しているのか」といった情報は、文献だけでは分かりにくいことがあります。
こうした文献では拾いにくい情報を把握する手段の一つが、現地の生活者や企業担当者、専門家などへのインタビューです。
結論:インタビューで「本音」を引き出すには、質問するだけでなく、対象者が話しやすい環境と深掘りできる設計が重要です。
文献調査では確認しにくい考え方や経験を把握するには、対象者の回答をそのまま受け取るのではなく、「なぜそう考えるのか」「具体的にはどういう場面なのか」と掘り下げることが重要です。
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公開情報では分からない経験や判断理由を質問する
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「なぜ」「具体的には」と追加質問を重ねて回答を深掘りする
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対象者が否定されたと感じないよう、話しやすい関係をつくる
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通訳を介する場合は、通訳者の役割や質問・回答の伝え方を事前にすり合わせる
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言葉だけでなく、文化的な背景や文脈も含めて回答を解釈する
なお、「本音」とは必ずしも対象者の隠された真実をそのまま取り出すことを意味するものではありません。インタビューで得られるのは、対象者がその場で語った経験、認識、意見などです。そのため、回答を他の情報と照らし合わせながら解釈することも重要です。
1. 文献調査だけでは分からない情報とは?
海外市場について調査するとき、まず政府統計、業界レポート、企業情報、ニュース記事などを調べるケースは多いでしょう。
こうした文献や公開情報は、市場規模や制度、競合企業、業界構造などを把握するうえで重要です。
一方で、公開情報には表れにくい情報もあります。
| 文献・公開情報で把握しやすいこと | インタビューで掘り下げやすいこと |
| 市場規模・統計 | 実際の利用経験や不満 |
| 制度・規制 | 制度が現場でどのように受け止められているか |
| 企業情報 | 取引先や業界関係者から見た評価 |
| 製品・サービスの特徴 | 購入・採用・利用を決める理由 |
例えば、ある製品について「価格が競争力になる」という情報が文献から得られたとしても、実際の購入者が価格だけで選んでいるとは限りません。「既存の取引先との関係」「納期への安心感」「担当者の対応」など、公開情報からは見えにくい判断材料が存在する可能性があります。
こうした背景や経験を把握することが、インタビューを行う一つの目的です。
2. 「本音」を引き出すには、最初から答えを決めつけない
インタビューで注意したいのが、調査する側があらかじめ答えを想定しすぎることです。
例えば、「海外の消費者は価格を重視しているはずだ」という仮説を持っている場合、「価格が一番重要ですか?」と質問すれば、対象者はその質問に合わせて回答する可能性があります。
そこで、最初から選択肢を限定するのではなく、「商品を選ぶとき、どのような点を重視しますか?」のように、対象者が自由に話せる質問から始める方法があります。
回答の中に気になる点が出てきたら、「それはなぜですか」「具体的にはどのような経験がありましたか」と掘り下げていきます。
重要なのは、調査者が聞きたい答えに誘導するのではなく、対象者の回答から次の質問を組み立てていくことです。
3. 「なぜ?」を繰り返すだけでは、本音は引き出せない
ただし、「なぜですか?」を繰り返せばよいというわけでもありません。
同じ質問を何度も繰り返すと、対象者に負担を感じさせたり、尋問のような印象を与えたりする可能性があります。
例えば、「この商品を使っています」と回答された場合には、
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「いつ頃から使っていますか?」
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「使い始めたきっかけは何でしたか?」
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「使う前と比べて何が変わりましたか?」
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「逆に、不満に感じる点はありますか?」
といったように、経験や具体的な場面を聞くことで、回答の背景を掘り下げることができます。
「意見」だけでなく、「実際に何をしたのか」「どのような場面でそう感じたのか」を聞くことが、定性調査では重要になります。
4. 本音を引き出すには、対象者が話しやすい環境も重要
インタビューでは、質問内容だけでなく、対象者と調査者の関係性も重要です。
例えば、対象者が「この回答をしたら評価されるのではないか」と感じていれば、否定的な意見や失敗経験について話しにくくなる可能性があります。
そのため、インタビューの冒頭で調査の目的や回答の扱いを説明し、対象者が率直に話しやすい環境をつくることが大切です。
また、調査者が回答を否定したり、特定の回答を誘導したりしないことも重要です。
インタビューにおける「本音」は、質問項目だけで機械的に取り出せるものではありません。対象者が経験や考えを話しやすい状況をつくり、その回答をさらに掘り下げることが必要です。
5. 通訳を介したインタビューでは、情報が薄まることはある?
海外インタビューでは、調査者と対象者が異なる言語を話すため、通訳を介してインタビューを行うことがあります。
この場合、「通訳を介すると、対象者の本当の意見が分からなくなるのではないか」と心配になるかもしれません。
実際、通訳を介した質的インタビューでは、質問と回答が複数の言語を行き来するため、単純な言葉の置き換えだけでは扱えない問題があります。研究方法に関する文献でも、通訳者の役割や翻訳の仕方がインタビューで得られるデータに影響し得ることが指摘されています。:
特に注意したいのが、対象者の回答を通訳者が要約してしまうケースです。回答が簡潔にまとめられると、対象者が使った表現や具体的なエピソード、微妙なニュアンスなどが調査者に伝わりにくくなる可能性があります。
そのため、通訳を単なる「言葉を変換する人」と考えるのではなく、インタビューの品質に関わる重要な役割として位置づけることが大切です。
6. 通訳による情報の希薄化を防ぐには?
通訳を介したインタビューでも、事前の準備によって情報の取りこぼしを減らすことができます。
① 調査目的と質問内容を通訳者と共有する
通訳者が調査の目的を理解していれば、専門用語や質問の意図を把握したうえで対応しやすくなります。
特に専門性の高い調査では、事前に調査テーマ、対象者、質問項目、専門用語などを共有しておくことが重要です。
② 回答を要約しすぎないよう、役割を明確にする
「要点だけを伝える」のか、「対象者の発言をできるだけ忠実に伝える」のかによって、インタビューから得られる情報量は変わります。
調査の目的に応じて、通訳者に求める役割を事前に明確にしておくことが重要です。
③ 気になる回答は、その場で追加確認する
対象者の回答について調査者が「もう少し詳しく聞きたい」と感じた場合、その場で追加質問を行います。
一度の通訳で回答を完結させようとせず、必要に応じて具体例や背景を確認することで、表面的な回答だけで終わることを防ぎやすくなります。
④ インタビュー後に内容を確認する
研究方法に関する文献では、通訳者を調査プロセスに参加させ、インタビュー前の準備やインタビュー後の翻訳プロセスの確認を行うことの重要性も指摘されています。
調査後に、特に重要だった発言や解釈が難しかった表現について確認することで、単純な翻訳だけでは把握しにくい文脈を整理しやすくなります。
7. 「通訳がいるから大丈夫」ではなく、調査チームとして設計する
通訳を介したインタビューでは、調査者、対象者、通訳者の3者によるコミュニケーションになります。
そのため、調査者だけが質問内容を理解していればよいわけではありません。調査目的や質問の意図、専門用語などを通訳者と共有し、調査チームとしてインタビューを設計することが重要です。
海外の質的インタビューにおける通訳については、研究上も通訳者を単なる言語変換の担当者として扱うのではなく、調査プロセスにおける役割や影響を考慮する必要があるとされています。
つまり、「通訳を使えば言語の問題は解決する」と考えるのではなく、「どうすれば調査対象者の発言をできるだけ正確に理解できるか」という視点から、質問設計、通訳、記録、分析までを一つの調査プロセスとして考えることが重要です。
8. 本音を引き出すために、インタビュー前に整理しておきたいこと
海外インタビューを実施する前には、次のような項目を整理しておくとよいでしょう。
| 確認項目 | 考えるポイント |
| 調査目的 | 最終的に何を明らかにしたいのか |
| 対象者 | 誰に聞けば目的を達成できるのか |
| 質問設計 | 自由回答から深掘りできる構成になっているか |
| 通訳 | 調査テーマを理解し、必要なニュアンスを伝えられる体制か |
| 記録 | 回答内容をどのように記録・整理するか |
| 分析 | 個別の回答だけでなく、回答者間の共通点や違いをどう見るか |
こうした準備を行うことで、「とりあえず海外の人にインタビューしてみる」という調査から、意思決定に使える情報を得るための調査へとつなげやすくなります。
まとめ
文献や公開情報は海外市場を理解するうえで重要な情報源ですが、実際の経験や判断理由、商品・サービスへの不満など、公開情報だけでは分かりにくい情報もあります。
こうした情報を把握するために、海外の生活者、企業担当者、専門家などへのインタビューが活用されます。
インタビューで「本音」を引き出すには、質問を用意するだけでは十分ではありません。対象者が話しやすい環境をつくり、回答に対して具体的な質問を重ね、経験や判断の背景まで掘り下げることが重要です。
また、海外インタビューで通訳を介する場合は、言葉の置き換えだけでなく、質問の意図や回答のニュアンスをどのように伝えるかも考える必要があります。通訳者と調査目的や質問内容を共有し、必要に応じて回答を追加確認するなど、調査チームとして設計することが重要です。
海外インタビューで重要なのは、「答えを聞くこと」ではなく「答えの背景まで理解すること」です。
文献では分からない現地の認識や経験を把握したい場合は、調査目的に合わせて対象者、質問設計、通訳、分析までを一体として考えることが重要です。
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