海外進出を検討するとき、「この国で自社の商品は受け入れられるのか」「現地の消費者は購入してくれるのか」は重要な判断材料です。
そこで活用できるのが、商品・サービス受容性調査です。ただし、受容性調査の結果だけで「この国に進出すべき」と判断するのは適切ではありません。
海外進出の可否を判断するには、市場規模や競合、法規制、販売チャネル、価格、収益性など複数の要素を確認する必要があります。その中で受容性調査は、主に「現地の顧客に商品・サービスが受け入れられる可能性があるか」を確認する役割を担います。
本記事では、海外進出の可否判断に受容性調査を組み込む際の考え方と、調査で確認したい項目を解説します。
【結論】受容性調査は「進出する・しない」を単独で決める調査ではなく、消費者側から見た市場成立の可能性を確認するために組み込みます。
まず市場規模や競合、法規制などの情報から進出候補市場を絞り込み、その後、受容性調査によって「誰が買いそうか」「どのような価値を感じるか」「価格を受け入れられるか」などを確認します。
その結果を販売チャネル、物流、現地コスト、競合状況などと合わせて評価し、最終的な進出判断につなげることが重要です。
1.海外進出の可否判断で、なぜ受容性調査が必要なのか?
海外進出の初期段階では、対象国の人口、市場規模、成長性、競合企業、所得水準、流通環境など、さまざまな情報を調べます。
しかし、市場規模が大きいからといって、自社の商品が売れるとは限りません。すでに競合商品が多数存在している場合や、現地の消費者が日本とは異なる価値基準を持っている場合もあります。
そこで確認したいのが、「市場が存在するか」だけではなく、「自社の商品・サービスがその市場で受け入れられる可能性があるか」です。
受容性調査は、この消費者側の情報を定量的・定性的に確認するための手段として位置づけることができます。
2.受容性調査は、海外進出判断のどの段階で行うべきか?
受容性調査を行うタイミングは、海外進出の検討初期から、ある程度候補市場を絞った段階が基本です。
最初からすべての国を対象に詳細な受容性調査を行うのではなく、まず公開情報や既存の市場調査などから候補国を絞り、その後に消費者調査を実施すると効率的です。
| 段階 | 確認すること | 受容性調査の役割 |
|---|---|---|
| ①市場候補の選定 | 市場規模、成長性、競合、制度など | 候補市場を絞り込む前提情報を整理 |
| ②消費者ニーズの確認 | 商品評価、購入意向、ニーズなど | 商品が受け入れられる可能性を確認 |
| ③価格・販売条件の検証 | 価格、競合、購入環境など | 価格受容性や購入条件を確認 |
| ④進出判断 | 収益性、実現可能性、リスクなど | 消費者側の調査結果を他の情報と統合 |
つまり、受容性調査は「進出判断の最後に行う確認」だけではなく、候補市場を具体的に評価する段階で活用することができます。
3.海外の受容性調査では、何を確認するのか?
海外進出の可否判断を目的とする場合、単純に「この商品を買いたいですか」と聞くだけでは十分ではありません。
例えば、次のような項目を組み合わせて確認します。
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商品・サービスへの評価:どのような点に価値を感じるのか、反対にどこに不満や不安があるのかを確認します。
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購入意向:商品を提示したうえで、購入したいと思う人がどの程度いるのかを確認します。
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購入理由・非購入理由:なぜ購入したいのか、なぜ購入したくないのかを確認します。
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価格受容性:どの程度の価格なら受け入れられる可能性があるのかを確認します。
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対象者の違い:年齢、所得、利用経験、ライフスタイルなどによって評価が異なるかを確認します。
特に海外では、日本国内で売れているという事実だけを前提にせず、現地の消費者にとっての商品価値を改めて確認することが重要です。
4.「買いたい」という回答だけで進出可否を判断しない
受容性調査で購入意向が高かったとしても、それだけで海外進出の成功を予測できるわけではありません。
例えば、消費者が商品に興味を持っていても、価格が高すぎる、購入できる店舗が少ない、競合商品が強い、購入方法が分からないなどの理由によって、実際の購入につながらない可能性があります。
そのため、「購入したい人が何%いるか」という数字だけではなく、なぜ購入したいのか、なぜ購入しないのかまで確認することが重要です。
この点は、受容性調査を海外進出判断に利用するときに特に注意したいポイントです。
5.価格受容性は、海外進出判断の重要な材料になる
海外市場では、商品そのものが評価されていても、現地で成立する価格にならなければ事業として成立しません。
そのため、受容性調査では価格についても確認することが考えられます。例えばPSM(Price Sensitivity Meter)分析では、「安すぎて品質に不安を感じる価格」「安いと感じる価格」「高いと感じる価格」「高すぎて購入を検討しない価格」といった価格に対する認識を調べ、価格受容性の範囲を分析します。
ただし、PSMから得られる価格帯を、そのまま現地での販売価格と考えるべきではありません。競合商品の価格、原価、関税、物流費、販売手数料、為替など、実際の事業条件も合わせて検討する必要があります。
6.受容性調査の結果を「進出判断」にどうつなげるか?
受容性調査を実施した後は、調査結果を単独で評価するのではなく、他の市場情報と組み合わせて判断します。
| 判断項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 市場性 | 市場規模、成長性、ターゲット人口など |
| 顧客受容性 | 商品評価、購入意向、購入理由、価格受容性など |
| 競争環境 | 競合商品、競合価格、ブランド認知、差別化の可能性など |
| 販売可能性 | 販売チャネル、代理店、EC、店舗など |
| 事業性 | 物流費、現地コスト、投資額、収益性など |
| リスク | 法規制、商習慣、為替、政治・経済環境など |
例えば、受容性が高くても販売チャネルの確保が難しい市場であれば、すぐに本格進出するのではなく、現地パートナーを探す、テスト販売を行うなど、進出方法を変える判断も考えられます。
反対に、受容性が一定程度確認でき、競争環境や販売条件にも大きな問題がなければ、より具体的な事業計画に進む判断材料になります。
7.海外進出前の受容性調査では「比較」が重要
海外進出を検討する際には、単に「この国で受け入れられるか」を調べるだけでなく、複数の国・地域を比較できる設計にすることも有効です。
例えば、同じ商品について複数市場で商品評価や購入意向、価格受容性を確認すれば、「どの市場で消費者側の受容性が相対的に高いのか」を検討できます。
ただし、国ごとに所得水準、競合、流通環境、商品認知などが異なるため、単純に数値の高低だけで順位を決めるのではなく、その背景まで確認することが重要です。
8.受容性調査を海外進出の「Go/No-Go判断」に使うときのチェックポイント
海外進出の可否判断に受容性調査を組み込む場合は、次の点を確認しておくとよいでしょう。
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進出候補市場を明確にしているか
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実際のターゲット顧客に近い対象者を設定しているか
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商品・サービスの特徴を現地の回答者が理解できるように提示しているか
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購入意向だけでなく、購入理由・非購入理由まで確認しているか
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価格受容性を確認しているか
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競合商品との比較を考慮しているか
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調査結果を市場規模、販売チャネル、コスト、規制などと組み合わせて判断しているか
9.受容性調査は「進出するため」だけでなく「進出方法を決めるため」にも使える
海外進出の調査というと、「進出するか、しないか」を決めるための調査と考えがちです。
しかし、受容性調査から得られる情報は、進出方法を検討する際にも活用できます。
例えば、消費者の関心は高いものの認知度が低い場合には、まず現地でのPRやブランド構築を優先するという選択肢があります。また、購入意向はあるものの価格面で課題がある場合には、商品仕様や容量、価格設定を見直すことも考えられます。
このように、受容性調査の目的を「Go/No-Go」の二択だけに限定せず、「どの市場で、誰に、どのような商品を、どの価格・販売方法で提供するか」を検討する材料として活用することが重要です。
まとめ:受容性調査は、海外進出判断の「消費者側の検証」として組み込む
海外進出の可否判断では、市場規模や競合、法規制、販売チャネル、事業コストなど、多くの要素を確認する必要があります。
受容性調査はその中で、現地の消費者が商品・サービスをどの程度評価するのか、購入する可能性があるのか、どのような価格を受け入れられるのかなどを確認する役割を担います。
重要なのは、調査結果を単独で「進出できる」と判断しないことです。市場調査や競合調査、販売環境、収益性などと組み合わせることで、海外進出の可能性だけでなく、進出方法や優先市場を検討するための材料になります。
海外市場での商品・サービス受容性調査をご検討の方へ
WIPジャパンでは、海外市場を対象とした定量調査・定性調査などを通じて、現地消費者のニーズや商品・サービスの受容性を調査しています。
海外進出を検討しているものの、「どの国を優先すべきか」「現地で商品が受け入れられるのか」「価格をどのように設定すべきか」などの判断にお悩みの場合は、調査目的や検証したい仮説に合わせて調査設計を検討することが重要です。