訪日外国人の消費行動や店舗での体験を調べる際、「アンケートで十分なのか、それとも実際の行動を観察したほうがよいのか」と迷うことがあります。
アンケート調査と行動観察調査は、どちらか一方が優れているわけではありません。それぞれ得意とする情報が異なるため、調査目的に応じて使い分けることが重要です。
結論:訪日外国人の「意識や評価」を知りたいならアンケート、「実際に何をしたか」を知りたいなら行動観察調査が向いています。
アンケートは、多くの対象者から認知、満足度、購入経験、意向などを効率的に収集するのに向いています。一方、行動観察調査は、店舗内でどの商品を見たか、どこで立ち止まったか、何を手に取ったかなど、実際の行動を把握するのに適しています。
さらに、行動観察と出口ヒアリングを組み合わせれば、「何をしたか」と「なぜそうしたのか」の両方を確認できます。
1.行動観察調査とアンケート調査の違いとは?
大きな違いは、「本人から回答を得る調査」なのか、「実際の行動を観察する調査」なのかという点です。
| 比較項目 | アンケート調査 | 行動観察調査 |
|---|---|---|
| 主に分かること | 意識・評価・認知・経験・意向など | 実際の行動・回遊・商品接触など |
| 情報の取り方 | 対象者の回答を収集 | 対象者の行動を観察・記録 |
| 比較・集計 | 多数の対象者を比較しやすい | 具体的な行動を詳しく見るのに向く |
| 向いている課題 | 「どう感じているか」「どの程度認知しているか」 | 「実際にどう行動しているか」 |
つまり、同じ「訪日外国人の購買行動を知りたい」という目的でも、何を知りたいのかによって適した調査方法が変わります。
2.アンケート調査が向いているのはどんな場合?
アンケート調査が向いているのは、訪日外国人の意識や評価を広く把握したい場合です。
例えば、次のような情報を調べる場合です。
-
日本への旅行で何に興味を持っているか
-
特定の商品やサービスを知っているか
-
店舗や施設を利用して満足したか
-
商品を購入したか
-
購入理由・購入しなかった理由は何か
-
今後購入・利用したいと思っているか
また、対象者数を増やして回答を集め、国籍、年代、訪日回数などの属性別に比較したい場合にもアンケートは使いやすい方法です。
例えば、「初めて日本を訪れた人とリピーターでは、商品への評価に違いがあるか」といった分析を行うことができます。
3.行動観察調査が向いているのはどんな場合?
行動観察調査が向いているのは、訪日外国人が実際の現場でどのように行動しているのかを知りたい場合です。
例えば店舗であれば、次のような行動を観察できます。
-
どの売場に最初に向かったか
-
どの商品に興味を示したか
-
商品を手に取ったか
-
複数の商品を比較したか
-
どこで長く立ち止まったか
-
同行者や店員と相談したか
-
購入まで進んだか
アンケートで「商品を見た」と回答していても、実際には短時間しか見ていない場合があります。反対に、本人が特に意識していなかった行動が、観察によって見つかることもあります。
このような「回答として表れにくい行動」を確認したい場合、行動観察調査が適しています。
4.「意識」を知りたいならアンケート、「行動」を知りたいなら観察
両者の違いを考えるときは、「何を知りたいのか」を起点にすると判断しやすくなります。
| 知りたいこと | 向いている調査 |
|---|---|
| 商品を知っているか | アンケート |
| 商品をどう評価しているか | アンケート |
| 店舗内でどこを見ているか | 行動観察 |
| どの商品を比較しているか | 行動観察 |
| 購入しなかった理由 | アンケート・ヒアリング |
| 行動と理由を結び付けたい | 行動観察+出口ヒアリング |
ただし、これはあくまで基本的な使い分けです。調査テーマによっては、アンケートと行動観察を組み合わせたほうが有効な場合があります。
5.アンケート調査だけでは分かりにくい情報とは?
アンケートでは、対象者が「覚えていること」「認識していること」「回答できること」を中心に情報を集めます。
そのため、店舗内での細かな動きや、本人が意識していない行動については把握しにくい場合があります。
例えば、訪日外国人が「この商品に興味があった」と回答したとしても、実際の店舗では商品を一瞬見ただけなのか、手に取って詳しく確認したのか、同行者と相談したのかまでは分からないことがあります。
このような情報を知りたい場合には、実際の店舗内で行動を観察する必要があります。
6.行動観察調査だけでは分からないこともある
一方で、行動観察調査にも限界があります。
例えば、対象者が商品を手に取ったことは分かっても、「なぜ手に取ったのか」までは、観察だけでは判断できません。
また、購入しなかった理由についても、価格、サイズ、持ち帰りやすさ、商品への興味、時間の制約など、さまざまな可能性が考えられます。
そのため、行動観察の結果だけから理由を推測するのではなく、必要に応じて出口ヒアリングなどを組み合わせることが重要です。
7.訪日外国人調査では「行動観察+出口ヒアリング」も有効
店舗での訪日外国人調査では、行動観察と出口ヒアリングを組み合わせる方法があります。
例えば、調査対象者が店舗内で商品を見ている様子を観察し、その後に出口で「先ほどご覧になっていた商品について、どのような点が気になりましたか」と質問します。
この方法なら、観察によって得られた「実際の行動」と、ヒアリングによって得られた「本人の認識」を照らし合わせることができます。
ただし、対象者が観察されていることによって普段とは異なる行動を取る可能性もあるため、調査方法や観察の仕方については事前に十分検討する必要があります。
8.目的別に見る、適した調査方法
訪日外国人を対象とした調査では、調査目的によって適した方法が変わります。
| 調査目的 | おすすめの方法 | 理由 |
|---|---|---|
| 認知度を把握したい | アンケート | 対象者間で比較しやすい |
| 満足度を測りたい | アンケート | 評価を数値化しやすい |
| 店舗内の動きを知りたい | 行動観察 | 実際の行動を直接確認できる |
| 購買行動の理由を知りたい | 行動観察+ヒアリング | 行動と理由を組み合わせて確認できる |
| 国籍・属性別に比較したい | アンケート | 多数の対象者からデータを集めやすい |
このように、調査方法を選ぶ際には「アンケートと行動観察のどちらが優れているか」ではなく、「今回の調査で何を明らかにしたいのか」を基準に考えることが重要です。
9.まとめ:訪日外国人調査は目的に応じて使い分ける
訪日外国人の行動観察調査とアンケート調査は、それぞれ得意とする情報が異なります。
-
アンケート調査:意識、認知、評価、満足度、購入経験などを把握するのに向いている
-
行動観察調査:店舗内での回遊、商品接触、比較など、実際の行動を把握するのに向いている
-
出口ヒアリング:行動の背景や理由を確認するのに活用できる
「意識」を広く知りたいならアンケート、「行動」を詳しく知りたいなら行動観察。さらに「なぜその行動をしたのか」まで知りたい場合は、出口ヒアリングを組み合わせる方法があります。
訪日外国人の調査では、調査方法を先に決めるのではなく、まず調査目的と知りたい情報を整理することが重要です。
WIPジャパンでは、訪日外国人を対象としたアンケート、行動観察、ヒアリングなど、調査目的に応じた調査設計をご提案しています。