「訪日外国人が店舗に来ているのに、なぜ購入につながらないのか?」
「商品には興味を持っているように見えるが、どこで購入をやめているのか分からない」
訪日外国人を対象とした小売店舗の調査では、購入者だけにアンケートを行うと、「購入に至らなかった人」がどの段階で離脱したのかを把握しにくいことがあります。
そこで有効なのが、店舗内での行動観察と出口ヒアリングを組み合わせた調査です。商品を見る、手に取る、比較する、価格を確認する、店員に質問する、購入せずに離れるといった一連の行動を確認することで、購入に至るまでのどこに課題があるのかを整理できます。
本記事では、訪日外国人の店舗内行動を対象に、「機会損失」をどのように捉え、どのような調査を設計すればよいのかを解説します。
結論:機会損失は「売れなかった金額」ではなく、購入に至らなかった行動を捉えることから始める
店舗における「機会損失」を調査するときは、最初から「失われた売上金額」を測定しようとするのではなく、購入につながらなかった行動や、購入を妨げた可能性のあるポイントを把握することが重要です。
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どの商品・売場に興味を示したのか
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商品を手に取った後、どのような行動をしたのか
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価格や商品説明を確認したのか
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他の商品と比較したのか
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店員への質問や相談があったのか
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どの段階で購入せずに離れたのか
さらに、出口ヒアリングで「なぜ購入しなかったのか」を確認することで、観察した行動の背景を探ることができます。
つまり、機会損失を可視化する調査では、「行動」と「理由」を分けて把握することがポイントです。
1. 店舗における「機会損失」とは何か?
店舗でいう機会損失とは、単純に「商品が売れなかったこと」だけを意味するわけではありません。
例えば、訪日外国人が店舗に来店し、商品に興味を持ったにもかかわらず、購入せずに店舗を出たとします。
この場合でも、購入しなかった理由は一つとは限りません。
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価格が想定より高かった
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商品の違いが分からなかった
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商品説明が理解できなかった
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欲しい商品を見つけられなかった
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言語面で店員に相談しにくかった
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購入方法が分からなかった
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他の商品と比較して購入を見送った
もちろん、購入しなかった理由が店舗側の問題とは限りません。旅行者本人の予算や旅行日程、荷物の量、購入予定の有無など、店舗以外の要因も考えられます。
そのため、調査では「購入しなかった=店舗の機会損失」と決めつけず、購入に至るまでの行動と、その背景を確認する必要があります。
2. まず「購入までの行動」を分解する
機会損失を調べるためには、店舗内での行動を一つのまとまりとして見るのではなく、いくつかの段階に分けて考えると分かりやすくなります。
| 段階 | 観察する行動の例 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 来店 | 入店、売場への移動 | どの売場に向かうのか |
| 商品発見 | 商品を見る、立ち止まる | どの商品に興味を示すのか |
| 商品比較 | 手に取る、比較する | 何を比較しているのか |
| 購入判断 | 価格・表示を見る、店員に質問する | 判断を妨げているものはないか |
| 購入・離脱 | 購入、商品を戻す、売場を離れる | どこで購入につながらなくなるのか |
このように行動を分解すると、「来店者は多いのに購入率が低い」という結果だけでは見えない問題を、より具体的に検討できます。
3. 行動観察では「何を見ればよいか」を事前に決める
行動観察を実施する際に重要なのは、調査員が店舗内で自由に見て回ることではありません。
あらかじめ「どの行動を観察するのか」を定義しておく必要があります。
例えば、次のような項目を設定できます。
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入店後、どの商品カテゴリーに向かったか
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商品棚の前で立ち止まったか
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商品を手に取ったか
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パッケージや商品説明を確認したか
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価格を確認したか
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複数の商品を比較したか
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同行者と相談したか
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店員に質問したか
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購入したか、購入せずに離れたか
重要なのは、調査後に分析できるよう、観察項目をできるだけ具体的にしておくことです。
4. 「購入しなかった人」だけを見るのではなく、比較する
機会損失を考えるとき、「購入しなかった人」に注目しがちです。
しかし、購入者と非購入者の行動を比較することで、違いが見えやすくなる場合があります。
| 比較項目 | 購入者 | 非購入者 |
|---|---|---|
| 商品接触 | 商品を手に取った | 見るだけで離れた |
| 価格確認 | 価格を確認して購入 | 価格確認後に離脱 |
| 商品比較 | 比較後に購入 | 比較後に購入を見送る |
| 店員への質問 | 質問して購入 | 質問せずに離れる |
このような比較を行うことで、「購入者と非購入者では、どの行動が異なっているのか」を検討できます。
ただし、こうした比較だけで「この行動が購入を妨げた原因だ」と断定することはできません。行動観察はあくまで、問題が発生している可能性のあるポイントを見つけるための材料として活用します。
5. 出口ヒアリングで「なぜ購入しなかったのか」を確認する
行動観察によって「購入しなかった」という事実が分かっても、その理由までは分からない場合があります。
そこで、店舗を出た後などに対象者へヒアリングを行います。
例えば、次のような質問が考えられます。
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先ほどの商品を見ていた理由は何ですか?
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購入を検討しましたか?
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購入しなかった理由は何ですか?
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価格についてどう感じましたか?
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商品説明は分かりやすかったですか?
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他の商品と比較しましたか?
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購入するために不足していた情報はありましたか?
例えば、観察では「商品を手に取った後に戻した」という行動が確認でき、ヒアリングでは「価格が予算を超えていた」という回答が得られたとします。
このように、行動と理由を組み合わせることで、単なる「未購入」という結果よりも、改善すべきポイントを考えやすくなります。
6. 訪日外国人調査では「言語・文化」も調査設計に入れる
訪日外国人を対象にする場合、一般的な店舗調査に加えて、言語や文化的背景も考慮する必要があります。
例えば、商品説明を読まなかった理由が「興味がなかった」ためなのか、「日本語で書かれていて理解できなかった」ためなのかによって、改善策は変わります。
また、店員への質問が少なかったとしても、「質問する必要がなかった」のか、「言葉が通じるか不安だった」のかでは意味が異なります。
そのため、訪日外国人を対象とした調査では、国籍・居住地域・言語などの対象者条件を整理するとともに、ヒアリング時の言語対応についても事前に検討することが重要です。
7. 「機会損失」を可視化するための調査設計例
店舗での行動を具体的に把握したい場合は、次のような調査設計が考えられます。
| 調査工程 | 確認する内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 事前設計 | 対象者・店舗・観察項目を設定 | 調査の基準をそろえる |
| 行動観察 | 商品接触、比較、価格確認、離脱など | 実際の行動を把握する |
| 出口ヒアリング | 購入・非購入の理由 | 行動の背景を確認する |
| 比較・分析 | 購入者・非購入者、商品・売場などの違い | 離脱ポイントを整理する |
| 改善検討 | 表示、売場、価格、接客など | 改善可能なポイントを考える |
この設計で重要なのは、「調査をした結果、何を判断したいのか」を事前に決めておくことです。
例えば、「外国人旅行者が商品を買わない理由を知りたい」という目的だけでは、観察項目が広くなりすぎる可能性があります。
「商品を認知してから購入判断に至るまでのどこで離脱しているのかを確認したい」のように、調査で確認したいポイントを具体化すると、観察項目やヒアリング項目を設計しやすくなります。
8. 機会損失を「金額」に換算する場合は別の分析が必要
ここまで説明した行動観察によって分かるのは、主に「どこで購入につながらなくなっている可能性があるか」です。
例えば、「100人のうち20人が商品を手に取ったが、そのうち5人しか購入しなかった」というような行動上の差を把握することはできます。
しかし、そこから「機会損失額は○万円だった」と直接計算することはできません。
金額まで推計する場合には、客数、購入率、客単価、対象商品の価格、販売実績など、別のデータと組み合わせる必要があります。
したがって、調査記事でいう「機会損失の可視化」は、まず購入に至らなかった行動と、その背景を特定することを中心に考えると適切です。
9. プライバシーや調査対象者への配慮も欠かせない
店舗内で人の行動を観察する場合、調査方法によっては個人情報やプライバシーへの配慮が必要になります。
特に写真・動画・録音などを使用する場合は、調査対象者への説明や同意、データの取り扱いなどを事前に整理しておく必要があります。
訪日外国人を対象とする場合も、対象者が外国人だから特別に扱うということではなく、調査方法に応じて適切な説明・同意・匿名化などを設計することが重要です。
また、店舗側の許可や調査実施条件についても、事前に確認しておく必要があります。
10. 訪日外国人の店舗行動を調べるときのチェックポイント
実際に調査を設計するときは、次の項目を整理しておくとスムーズです。
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何を知りたいのか:購入率、商品選択、売場の課題、非購入理由など
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誰を調べるのか:国籍、居住地域、訪日回数、商品利用経験など
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どこを見るのか:店舗、売場、商品棚、レジ周辺など
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どの行動を見るのか:商品接触、比較、価格確認、質問、離脱など
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何を聞くのか:購入理由、非購入理由、分かりにくかった点など
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どの言語で実施するのか:対象者に合わせた言語・通訳対応
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どう分析するのか:購入者・非購入者、商品、売場などの比較
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どこまでを機会損失と定義するのか:行動上の離脱なのか、金額まで推計するのか
特に最後の「機会損失の定義」は重要です。ここを曖昧にしたまま調査を始めると、調査後に「結局、何が分かったのか」が不明確になりやすいためです。
まとめ:訪日外国人の「買わなかった行動」を見ることで、店舗改善のヒントが見えてくる
訪日外国人の店舗における機会損失を調べる場合、最初から「失った売上金額」を測定しようとするのではなく、購入に至るまでの行動を分解し、どの段階で離脱しているのかを把握することが重要です。
行動観察によって「何をしたのか」を確認し、出口ヒアリングによって「なぜそうしたのか」を確認することで、アンケートだけでは見えにくい店舗内の行動を具体的に捉えることができます。
さらに、購入者と非購入者の行動を比較することで、商品表示、価格、売場、接客、言語対応など、改善を検討すべきポイントを整理しやすくなります。
ただし、「購入しなかった」という事実だけから店舗側の問題と判断することはできません。訪日外国人の行動には、旅行目的や予算、時間、購入予定などさまざまな要因が影響するためです。
そのため、訪日外国人の店舗行動を調査する際は、行動観察・出口ヒアリング・アンケートなどを目的に応じて組み合わせ、複数の情報から購入に至らない要因を検討することがポイントになります。
訪日外国人の店舗内行動を調査し、購買行動や離脱ポイントを把握したい場合は、対象者・店舗・調査目的に応じた調査設計をご提案します。