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通訳・翻訳ジャーナル(2011.2.21)

翻訳が生まれる現場に迫る(2)
翻訳会社に潜入

翻訳会社のしくみと仕事の流れ

産業翻訳者にとって、翻訳会社は仕事の発注元となる大切な存在。その機能と役割を知っておくことがプロとしての第一歩だ。
WIPジャパンを例に、翻訳会社の内部をさぐってみよう。


■ 翻訳会社の仕組みが知りたい!

Q1 翻訳会社とは?

翻訳を必要とする団体・個人のために、翻訳サービスを提供する専門企業のこと。基本的に翻訳はフリーランスの翻訳者に委託し、社内では営業、顧客との連絡、進行管理、翻訳原稿のチェック・校正にあたる。文章を翻訳するだけでなく、納品形態(データファイルの形式)に合わせてレイアウトやデザインを行うところも多い。
仕事を委託する翻訳者については、トライアルと呼ばれる試験を行い、合格者を登録。顧客から翻訳依頼を受けると、翻訳物の内容と、翻訳者の得意分野や実績、能力などを照らし合わせ、適任者に仕事を発注する。つまり、翻訳者にとっては「仕事の提供者」と言える。

Q2 翻訳会社にはどんな部署が?

会社によって部署名は異なるものの、基本的には「営業」「制作」「DTP」の3つだ。「営業」は翻訳を発注する顧客との窓口であり、クライアントの新規開拓も行う。「制作」は翻訳者とのやり取り・進行管理・訳文の校正やチェックなど、翻訳に関わる業務を担当。「DTP」は翻訳原稿をもとにレイアウトやデザインを施す部署だ。

Q3 どんな人が働いている?

WIP ジャパンでは、営業担当者、コーディネーター、プロジェクトマネージャー、チェッカー、DTP オペレーター、WEB デザイナーが働いている。翻訳会社によって名称が異なったり、業務を兼任していたり、該当する職種がなかったりもするが、基本的にはこうした職種に就く人が働いていると考えてOK。
同社の場合、東京オフィスと大阪オフィスを合わせると、コーディネーターとプロジェクトマネージャーの人数は合計21名

Q4 翻訳者の採用は?

翻訳会社が翻訳者を採用(登録)する場合、履歴書・職務経歴書で書類選考を行い、さらに「トライアル」と呼ばれる試験(実際に翻訳する)を課して合否を決める。応募資格として翻訳の実務経験を求めるところが多い。WIP ジャパンでは「専門分野での翻訳実務経験3年以上およびTOEIC900 点」が条件。そのうえで応募者が希望する分野でのトライアルを実施して判断する。ただ実務経験が浅くても「トライアルの結果次第では採用することもある」そうだ。

Q5 翻訳会社から見た“いい翻訳者”は?

産業翻訳者の最低条件(外国語→日本語への翻訳の場合)は「外国語の能力」「日本語力」「専門分野の知識」の3つ。それらに加えて、WIP ジャパンの楠山さんは以下を挙げている。「専門的な用語や背景情報を調べられる調査力、こちらから送ったメールへの素早いレスポンス、翻訳の正確性、納期の厳守などです。これらがきっちりされている方は信頼できるので、コーディネーターの間でも人気が集中する傾向にあります」。


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■ 仕事の流れは?

顧客からの問い合わせ

顧客から翻訳の問い合わせがあると、営業担当者が仕上がりの形態(データファイルの形式)や納期、予算などの要望を確認。原文の文字数をカウントし、要望も考慮して見積もりを提出する。

受注

見積もりを承諾した顧客から改めてオファーを受け、正式に受注。案件を担当するプロジェクトマネージャーの指揮のもと、作業がスタート。

※受注した時点で、プロジェクトマネージャーが営業担当者からお客様のご要望をすべて引き継ぎます。お客様が求める翻訳に仕上げるうえで大切な情報であり、翻訳者を選ぶ際の判断材料にもなります。

翻訳の発注

コーディネーターが顧客の要望をもとに、社内の翻訳者データーベースを検索。実績や経験から翻訳者を選定し、スケジュールの確認して翻訳を発注する。その際、原文ファイルだけでなく、固有名詞や部署名などの訳語がまとめられた用語集も送付。

※翻訳スピードが速い、前回の仕事で顧客の評判が良かったなど、データベースでわからない情報については、過去に仕事をしたことのあるコーディネーターに確認します。翻訳者の方の特長や評価を社内で共有することが、プロジェクトを成功させる上ではとても重要です。

翻訳作業

アニュアルレポートの翻訳にかけられる時間は1〜2週間。その間、コーディネーターは翻訳者からの作業上の問い合わせにも応じる。場合によっては、顧客に確認してから回答する。

翻訳原稿の納品

翻訳者から翻訳原稿が納品されると、誤訳や訳漏れ、誤字脱字はないか、指定された用語が使われているかなど、細かいチェックを行う。

※弊社では、チェックは外部のチェッカーもしくは社内のコーディネーターが行います。日本語から外国語への翻訳の場合、必ず社内のネイティブチェッカーが作業にあたります。

顧客へ納品

チェックが済んだ翻訳原稿をワードファイルで納品。その後、顧客から細部に関する訂正依頼があった場合には、それらを反映させてプロジェクト完了となる。

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■ 知っトク情報

(1)翻訳支援ツールとは?

プロジェクトによっては「翻訳支援ツール」(「翻訳メモリツール」とも呼ばれる)というソフトウエアを使用する場合もある。「翻訳支援ツール」は、あらかじめ原文と訳文をセットでPC 内に保存し、同じようなドキュメントを新たに翻訳する際、同一もしくは類似した箇所の訳文を自動で検索・表示する機能を持つ。作業の効率化、表現・用語の統一化につながるため、コンピュータマニュアルなど定期的に更新されるようなドキュメントや、類似表現の多い文書の翻訳に使用される。「翻訳支援ツール」にはいくつか種類があり、WIP ジャパンが導入している「TRADOS」は業界スタンダードの1つだ。

(2)コーディネーターから翻訳者をめざす道も

コーディネーターから翻訳者をめざす道も翻訳者志望の人にとって最初の壁となるのが「実務経験」。この壁をクリアする1つの方法が、コーディネーターからキャリアを始めるというものだ。翻訳に関わる業務全体を理解できること、翻訳者の翻訳原稿にふれられること、翻訳会社の他のスタッフに自分の人となりや能力を知ってもらえることなど、メリットは大きい。事実、WIP ジャパンにも、コーディネーターを経て翻訳者になった人がいるそうだ。

(3)「登録」=「仕事の保証」ではない

トライアルに合格して登録できたとしても、仕事が保証されたわけではない。どの翻訳会社も相当な人数の登録翻訳者を抱えているが、コンスタントに仕事を発注する翻訳者はその一部だ(WIP ジャパンでも「常時稼働しているのは全登録者の1割程度」とのこと)。仕事で同じミスを何度も繰り返していたのでは、当然仕事がこなくなる。逆に常にいい仕事をして翻訳会社の信頼を勝ち取れば、切れ目なく仕事が舞い込むことに。登録翻訳者になってからが本当のスタートだということを、しっかりと肝に銘じておこう。


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■ MESSAGE

楠山さん

プロジェクトによっては、経験のない方を採用することもあります。ビギナー翻訳者さんということで、実績ある翻訳者の方とくらべて翻訳料金は低くはなりますが、仕事を通して経験を積んでいただけるチャンスを提供したいと考えているためです。その場合、何か詳しい分野があるとか、セールスポイントがある方はやはり有利ですね。

古川さん

翻訳者に限らず、コーディネーターにもプロジェクトマネージャーにも当てはまることですが、翻訳に関わる仕事は「几帳面さ」と「丁寧さ」を持っている人でないと務まりません。こちらの指示やお渡しした用語集に則って翻訳し、誤字脱字や訳漏れがないかきちんと見直し、納期までに必ず納品する。そういう丁寧な仕事をしてくださる翻訳者の方には、安心してお任せできます。






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