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コンテンツブレイン編著『企業経営に役立つ!ASP/SaaS徹底活用術』カナリア書房 (2009.5)



■ 言語の専門家が海外向けECサイト構築に取り組む

ワールドインテリジェンスパートナーズジャパン株式会社(以下、WIPジャパン)は、海外調査を行う企業として一九九五年に創業された。その後、翻訳や通訳といった言語力を活かした事業を展開し、多言語ホームページ作成も手がけてきた。近年は特に海外向けウェブマーケティングに注力しているWIPジャパンが、マーケティングの一環として2008年から提供開始したのが、多言語・海外向けネットショップASP「マルチリンガルカート」だ。

9言語、21通貨に対応した多言語展開のECサイト構築をサポートする「マルチリンガルカート」は、元々は英語と日本語に対応した「バイリンガルカート」として開発された。開発を担当したのはWIPジャパン 第2情報事業部 WEBマーケティンググループの百瀬道子氏だ。当時独立起業していた百瀬氏は、受託開発を行う中で在日インド人向けに輸入商品を販売する二言語対応のECサイト構築をしたいという相談を受けた。「当時、お客様の要望を満たせるカートシステムがありませんでした。しかしゼロから開発するほどの予算もないと言われ、それならば自分が作ろうと考えました。予算が足りないというところから始まった開発だったため、中小企業でも無理なく使える価格を目指してASP型サービスを選択しました」と百瀬氏は語る。

当初は主にエンジニアとして来日している在日インド人向けに、英語と日本語の二言語で表示を行うものの、配送先は国内に限られており、決済手段も国内で使われるものだけだった。海外在住者向けの販売システムへと成長したのは、顧客の要望を受けたからだ。「海外向けに販売をしたいと言われ、配送や決済面で対応を図りました。また、言語的にもより多くのものに対応するなど、お客様の要望に応えるうちにできあがったサービスです」と百瀬氏。

そんな「マルチリンガルカート」とWIPジャパンの出会いは、百瀬氏が販売代理店としてのパートナーシップを期待してWIPジャパンにアプローチしたことがきっかけだった。「多言語サイト構築の依頼も増え、海外向けのECサイトを立ち上げたいというお客様もいた弊社としては、まさに事業ドメインにぴったりと当てはまる製品でした」と語るのはWIPジャパン 代表取締役の上田輝彦氏だ。「マルチリンガルカート」に大きな魅力を感じたという上田氏は、百瀬氏をWIPジャパンに迎え、自社サービスとして「マルチリンガルカート」の提供を行うことに決めた。


■ 多言語対応ECサイトをサポートする「マルチリンガルカート」

「マルチリンガルカート」が持つ最大の特徴は、フォームの項目を埋めるだけで多言語対応のECサイトが構築できることだ。ユーザーは商品名や説明文などを希望の言語に翻訳したものを用意し、画面上のフォームを埋めることで海外向けECサイトとして必要な項目が網羅されたページになる。登録された項目をテンプレート言語ごとに切り替えて表示するため、どの言語で表示しても文字化けが出ない仕組みだ。

対応する言語は日、英、韓、中(簡・繁)、仏、露、スペイン、ポルトガルの9言語。通貨も21種に対応しており、価格表示部分には国内価格と海外価格の双方を表示することもできる。決済方法は欧米で主流のPayPal(ペイパル)に対応しているのはもちろん、中国でトップシェアを持つ支付宝(アリペイ)にも対応。決済サービスには自社でそれぞれ申し込みが必要だが、クレジットカード以外にも多彩な決済方法から選択が可能だ。また、配送方法も複数設定することができる。

購買者に向けて決済方法や配送方法等で多彩な選択肢を示すことができるだけでなく、ショップ側からその利用方法をコントロールする手段があるのも良い。

たとえば、ショップ側が配送先として対応していない地域の住所は発送依頼が出せないようにしたり、軽いがかさばる、別途保険が必要であるなど、送料の確定が難しい商品に対しては、送料や保険料を発注時には確定させずに手動請求する手法もとれる。

「配送設定については、特にお客様から要望が多く、細かい対応まで作りこみました。このほかに、ASPサービスでありながらショップURLだけでなくSSL画面でも独自ドメインを利用できるようにし、マルチリンガルカートを使っていることが外部からはわからないようにする機能もお客様からの要望を受けて作ったものです。さまざまな部分でお客様がサービスを育ててくれています」と百瀬氏は語った。

利用価格もユーザー目線に立って設定されている。海外通販を手軽に始めてみたいというユーザーには、表示言語は二言語までで登録商品数も1,000点と制限があるながらも、月額9,700円の「ブロンズプラン」が手ごろ。もっと本格的に取り組みたいならば、表示言語が五言語に増え、商品も5,000点登録できる「シルバープラン」がある。こちらは独自ドメインでの運用にも対応して、月額利用料金は37,500円だ。さらに、より大規模なサイト向けに表示言語数に制限がなく、機能強化もされた「ゴールドプラン」が近日サービス開始される予定もある。


■ 日本の製品・サービスは海外で通用する

上田氏は「マルチリンガルカート」を日本の中小企業、特に地方の企業に積極的に使ってほしいと考えている。「これほど不景気なのに、日本国内にしか目を向けない企業が少なくありません。しかし私は日本の商品が海外で十分に戦える力を持っていると考えています。国内では先行きが厳しいと思われている製品でも、海外では特別なことをしないまま受け入れられるものもあるはずです。良い製品を持っている企業が、国内市場で十分な利益を出せないままに倒産するなど、もったいない話です」と上田氏は力強く語った。

常に海外各国と密接にかかわっている上田氏は、日本の製品やサービスが世界でもトップクラスの水準にあると感じることが多いという。「日本の消費者は納期や品質、安全等に非常に厳しいため、こうした市場で磨かれてきた製品やサービスは海外でも売れるはずです。たとえば伝統工芸品は国内で若い人向けに販売するのは難しいかもしれませんが、海外では注目されています。伝統的な素材を使って新しいデザインの製品を作る方法もあるでしょう。日本の中小企業が海外に向けて一歩踏み出すことができないのは残念です」と上田氏。

実際に、日本企業が国内と同じ感覚で対応すると、海外では驚くことも多いという。「規制等の問題は別として、サービスに関しては日本の感覚でやっていてトラブルが出ることはありません。実際にあった例では、納期に間に合うように発送した製品が配送の都合で一週間も遅れた時、日本企業の担当者は青くなってお詫びの連絡をしたのですが、お客様は怒っておらず、さらに現状を確認して再度連絡したところお礼を言われたということがありました」と百瀬氏は苦笑する。

納期や品質という面ではアドバンテージを持っている日本企業だが、海外通販を行うためには国内通販とは違った対応が求められる面も当然ある。特に感覚が違うのは配送方法だ。「日本では販売業者が配送方法を指定し、決まった方法で送るのが普通です。しかし海外では複数の配送方法から買い手が選択するのが一般的です。安いけれどリスクのあるEMS、さらにリスクは増えるけれど非常に安いSAL、高いけれど速く届くFedex、と選択肢がある中からユーザーが選びます」と百瀬氏。「マルチリンガルカート」にはこうした複数の配送先を登録し、配送料を自動計算する機能も搭載されている。海外通販の技術的な問題をサポートし、日本企業が高品質なサービスと製品を武器に、海外市場へ乗り出せるようにしてくれるのが「マルチリンガルカート」なのだ。

(続きは書籍をご覧ください)
※掲載の情報・価格は取材当時のものです。






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